医院開業と経営 Q&A
- Q9 簡易課税制度の利用の仕方を教えてください
- A9 消費税の申告・納付は、個人の開業医やクリニックにとってはあまり馴染みがないかもしれません。
基準期間(2年前)における課税売上高が1,000万円以下のような小規模事業者に対しては、その事務手数を考慮して納税義務が免除されます。病医院の場合、
医業収入のうち、社会保険診療や公費負担医療などの診療報酬については、消費税は非課税とされています。そのため、免税事業者となるケースが多いのです。
ただし、診療報酬の内容によっては、課税対象となるものがあります。課税対象となる収入は、つぎのようなものです。
.予防接種
.人間ドック
.健康診断
.美容整形
.生命保険会社からの審査料
納税額の計算
納税額の計算方式には、「本則課税方式」と「簡易課税方式」との2つがあります。
(1)本則課税方式
課税売上にかかる消費税額から、課税仕入れにかかる消費税額を控除(仕入税額控除)して計算します。
(2)簡易課税方式(基準期間における課税売上高が5,000万円以下の場合のみ選択可能)
課税売上にかかる消費税額から、課税売上高に一定割合のみなし仕入率(自由診療等は50%)を適用して計算した金額を控除します。
病医院は非課税売上の占める割合が高いケースが多いため、本則課税方式を選択すると、仕入税額を控除できなくなってしまいます。
(例)課税売上高2,000万円(外消費税100万円)、非課税売上高8,000万円、課税仕入高3,000万円(外消費税150万円)の場合
課税売上割合 2,000÷(2,000+8,000)=20%
仕入税額控除 150万円×20% =30万円
納税額 100万円−30万円 =70万円
同じ条件で、簡易課税方式で計算すると納税額は50万円となります。
仕入税額控除 100万円×50% =50万円
納税額 100万円−50万円 =50万円
計算方式を変更するだけで、20万円の節税ができます。
注意点
簡易課税方式は、計算が簡単なうえ、税金が安くなるメリットがありますが、設備投資をする場合などには本則課税方式をとったほうが有利な場合もあります。
また、一度選択してしまうと最低2年間は簡易課税方式で計算しなくてはなりません。1年目は簡易課税方式による納税が有利であっても、2年目には不利になることも
あります。こうした点を踏まえて慎重に選択しましょう。
基準期間の課税売上高が、5,000万円以下の場合は原則方式か簡易課税方式を選択できます。