医院開業と経営 Q&A

  • Q26 貸倒損失の計上について教えてください
  • A26 税法上の貸倒れは、社会通念上の貸倒れよりも厳格な要件を必要とし、次の3つの場合についてのみ貸倒損失を損金とすることを認めています。
    ①法律上の貸倒れ
    (ア)法律の手続きによる決定
    たとえば、会社更生による計画の認可決定により、売掛金などの債権の一部が切り捨てられることがあります。これは、会社更生法という法律により裁判所が債権の切り捨てを認めるものなので、切り捨てえられた部分が貸倒れとなります。
    (イ)関係者の協議による決定
    たとえば、債権者集会などの関係者の話し合いで、売掛金などの債権の一部が切り捨てられることがあります。すべての債権者が一定の割合で債権を切り捨てた場合など、合理的な基準により債権を切り捨てたときないは、切り捨てられた部分は貸倒れとなります。
    (ウ)債務免除
    債務者の債務超過の状態が相当期間継続しており、売掛金や貸付金などの債権の弁済が受けられないと判断できる場合があります。このような場合には、債務者に対して債権を放棄する旨を書面で債務者に通知(債務免除の通知)すれば、その通知をした債権については貸倒れとなります。
    ②事実上の貸倒れ
    債務者の資産状況や支払い能力などからみて、債権のすべてが回収できないことが明らかな場合には、法律上の債権放棄をすることなく、貸倒損失の計上が認められます。つまり、法律的に債権が消滅していなくても、経済的な認識により事実上の貸倒れと認めようとする取扱いです。たとえば、債務者の死亡、行方不明、破産などにより回収できないことが明らかな場合が該当します。
    ただし、債権の“全額の回収不能”が要件のため、一部でも回収の見込みがあれば貸倒れにはできません。また、抵当権などの担保がある場合には、担保物を処分するまでは貸倒損失の計上はできません。
    ③形式上の貸倒れ(売掛債権の特例)
    形式上の貸倒れには、債務者との継続的な取引を停止後一年以上経過した場合と、同一地域の売掛債権の総額が取り立てのコストに満たない場合の2つがあります。この場合、備忘価額を残して、損金経理により貸倒損失を計上することができます。たとえば1万円の債権の場合、帳簿に1円(備忘価額)のみを残して、残り9999円を貸倒損失とします。ともに、売掛金、未収請負金など売掛債権に限定して設けられた特例ですから、貸付金には適用がありません。