医業経営支援_福岡市中央区の長公認会計士事務所












持分の定めのある医療法人から持分の定めのない医療法人へ移行する場合に何か注意がありますか?


 

定款を変更し、県知事の認可を受ければ移行が可能です

しかしながら、持分の定めのある医療法人の出資者が、その出資持分を放棄(持分なしの医療法人への移行)したことによって、親族等の相続税又は贈与税の負担が不当に減少した場合には、相続税法の規定の適用を受け、医療法人を個人とみなし、医療法人に対し贈与税が課税されることになります。

この「この負担が不当に減少しない」要件には、同族親族等の関係者が役員等(社員を除く)の総数の1/3以下であること等が含まれており、ほとんどの医療法人がこの贈与税課税を受けることになりそうです。

したがって、移行は慎重に行う必要があります。
なお、特定医療法人、社会医療法人への移行は「負担が不当に減少」することにはあたりません。

 



各医療法人の税務上の相違について教えてください


 

概要は下記の通りです

(1)一般の医療法人
法人税、法人住民税については、一般法人と同じです。事業税については、社会保険診療収入に係る部分は非課税、かつ、軽減税率とされています。事業税がほぼないものとした場合の税率は約28%です。

(2)特定医療法人
法人税等については軽減税率が適用され、適用税率は約22%です。

(3)社会医療法人
本来業務にかかる所得については、公益事業として非課税となる他、本来業務以外の業務(附帯業務、収益業務)に係る所得に対する法人税等の税率は約22%となっています。また、収益業務に係る所得から、当該所得の50%、又は年間200万円のいずれか多い金額を損金算入できる「みなし寄附金」の制度も設けられています。

 



特定医療法人、社会医療法人について概要を教えてください。


 

上記法人は持分の定めのない社団医療法人・財団医療法人のうち医療法・法人税法の特例で認められた法人で、下記のような特徴があります。

・特定医療法人(租税特別措置法67条の2) 法人税等の税率が低い
・社会医療法人(医療法42条の2)     収益事業を行える 
                      医療保健業に係る法人税等が免除

また、各医療法人の認定要件は下記の通りです。

(1)特定医療法人(法人税法により設立が認められた法人)
  
@医療施設の基準等に係るもの

・医療施設が 原則40床以上病院であること
       救急告示病院であること
       救急告示診療所で15床以上を有すること
・社保診療収入が総収入の80%超であること
・収入金額が直接必要な経費額の1.5倍の範囲内であること
・全病床数に占める差額ベットの割合が30%以下であること 
    
A組織・財産に係るもの

・社員、理事、監事、評議員の同族割合が1/3以下であること
・役員等の構成は 理事6名以上 
         監事2名以上
         評議員、監事の倍数以上であること
・役員に対する給与支払額が年間3,600万円以下であること
・解散時の残余財産が国等に帰属すること

 
(2)社会医療法人(医療法により設立が認められた法人)
 
@医療施設の基準等に係るもの...
・救急医療等確保事業(都道府県が作成する医療計画に記載されたもの)に係る業務を行っていること
 イ 救急医療  ロ 災害時における医療  ハ へき地の医療  ニ 周産期医療  
 ホ 小児医療(小児救急医療を含む) 
 ヘ イ〜ホのほか、都道府県知事がその都道府県における疾病の発生状況等に照らして特に必要と認める医療
・社保診療収入が総収入の80%超であること
・収入金額が直接必要な経費額の1.5倍の範囲内であること

A組織・財産に係るもの
・社員、理事、監事、評議員の同族割合が1/3以下であること
・役員等の構成は 理事6名以上
         監事2名以上
         評議員、理事の定数以上(財団の場合)であること
・役員への給与(不当に高額でない)支給基準が定められており、支給基準が備置き・閲覧等の措置が講じられていること
・解散時の残余財産が国等に帰属すること

医療法人の業務範囲の区分
(法 人)                  (業務)   (内 容) 
特定医療法人、一般の医療法人、社会医療法人  本来業務   病院、診療所、介護老人保健施設
特定医療法人、一般の医療法人、社会医療法人  附帯業務   医療法42条1項に定める業務(定款等記載) 
                              老人デイサービスセンター 
                              訪問看護ステーション
特定医療法人、一般の医療法人、社会医療法人  付随業務   本来及び附帯業務に付随して発生する業務 
                              収益業務的な規模に至らないもの 
                              (例)従業員食堂、患者用駐車場、院内売店
               社会医療法人  収益業務   社会医療法人等が行う厚生労働大臣が認めた業務
                              (定款等記載) 
                              (例)介護用品等の販売 医療機器の貸付業
               社会医療法人  社会福祉事業 知的障害者施設 身体障害者入所施設等

 



医療法人の持分について詳しく説明して下さい。


 

第5次医療法が平成19年4月1日に施行されました。公益性の確立等の観点から、同日以降に設立される(認可申請を行う)医療法人については、財団医療法人又は、持分の定めのない社団医療法人に限られることとなりました。

(1)持分の定めのある医療法人出資持分の意味合いは、下記2つの財産権です。

@持分払戻請求権
 (定款)    
社員資格を喪失した者は、その出資額に応じて払戻しを請求することができる。
 
A残余財産分配請求権
(定款)  
本社団が解散した場合の残余財産は、払込済出資額に応じて分配するものとする。  

*出資額限度法人 
出資額限度法人は、持分の定めのある医療法人です。
上記の@Aの財産権については、出資額を限度として払戻し、分配を受けることになります。

(2)持分の定めのない医療法人出資持分の概念がありません。しかしながら、特に設立時の資金調達手段として基金制度を利用する「基金搬出型医療法人」の制度ができました。基金とは、医療法人に拠出された金銭その他の財産で、医療法人が拠出者に対し返還義務を負うものをいいます。なお、基金には利息を付すことができません。また、医療法人は、純資産額が基金の総額を超える部分を限度として、基金を返済できます。さらに、基金を返還する場合には、返還をする基金に相当する金額を代替基金として計上しなければならず、この代替基金は取り崩すことができません。非常に厳格に規定されています。

 



医療法人の運営機関等について教えて下さい


 

株式会社との比較で見た場合、下記のようになります

医療法人の機関としては、社団医療法人は、「社員総会」と「理事会」、また財団医療法人は「理事会」と「評議員会」の2つがあります。

(1)社員総会

社員総会とは、社団医療法人に置かれる機関(会議)で、社団医療法人の構成員である「社員」により組織されるものです。社員総会での意思決定は、医療法人の意思決定となります。社員総会は、医療法人の意思決定機関のうち最高の機関として位置付けられています。したかって、次のような医療法人の運営事務の基本的、かつ、重要な事項については必ず社員総会の議決を必要とします。

@定款の変更
A基本財産の設定及び処分(担保提供を含む)
B毎事業年度の事業計画の決定及び変更
C収支予算及び決算の決定
D剰余金又は損失金の処理
    ・
    ・ 
その他重要な事項

社員総会の議長は社員総会で選任されます。社員総会は、定款に別段の定めがある場合を除いて、総社員の過半数の出席がなければ、その議事を開き、議決をすることはできません。社員総会の議事は、定款に別段の定めがある場合を除いて、出席者の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによることとされています。この場合、「社員は、各1個の議決権を有する」とされています。

(2)理事会

医療法人は、役員として、理事3人以上及び監事1人以上を置かなければならないと規定されています。この役員のうち、理事の集まりによる機関が理事会です。これは、社団医療法人ともに置かれる必置機関となっています

1.社団医療法人の理事会 社団医療法人の場合の理事会は、社員総会におうて決議された法人の意思決定を円滑に進める職務執行機関に相当するものとされています。

2.財団医療法人の理事会 財団医療法人の理事会は、事実上の意思決定機関であって、かつ、職務執行の機関とされています。 (3)評議員会 評議員会は、医療法人の業務若しくは財産の状況又は役員の業務執行の状況について、役員に対して意見を述べたり、その諮問に答えたり、役員から報告を徴する機関です。 理事長は次に掲げる事項について、あらかじめ、評議員会の意見を聴かなければならないこととされています。

@予算、借入金(当該会計年度内の収入をもって償還する一時の借入金を除く。)及び重要な資産の処分に関する事項
A事業計画の決定又変更
B寄附行為の変更
C合併
D目的たる業務の成功の不能を事由とした解散
Eその他医療法人の業務に関する重要事項で寄附行為をもって定めるもの

なお、これらの事項は、寄付行為に評議員会の議決を要するものと定めることができることとされています。

評議員となることができるものは次に掲げる者ですただし、その財団医療法人の役員との兼任はできません。 

@医師、歯科医師、薬剤師、看護士その他の医療従事者のうちから、寄附行為の定めるところにより選任された者
A病院、診療所又は介護老人保健施設の経営に関して識見を有する者のうちから、寄付行為の定めるところにより選任された者
B医療を受ける者のうちから、寄附行為の定めるところにより選任された者

上記@〜Bに掲げる者のほか、寄附行為の定めるところにより選任された者

 



医療法人にはどのような類型があるのですか?


 

医療法人の法人としての基本は「社団」又は「財団」です

(1)「社団」医療法人

社団医療法人は、病院又は診療所等を開設することを目的とした人の集合体で、通常複数の人から現金や不動産、備品などの出資を受け設立されたものをいいます。出資者は「社員」となります。この場合、出資者がその出資持分に応じて払戻請求の権利を保有する形態の「持分の定めのある社団」と、出資持分に応じた払戻請求の権利を有しない「持分の定めのない社団」があるとされてきました。しかしながら、平成19年4月1日施行の改正医療法により「持分」概念はなくなり、同日以降設立される医療法人については「持分の定めのない」医療法人のみとなりました。また、財産権を持った持分の定めのある社団法人は当分の間、経過措置として存続されることになりました。

(2)「財団」医療法人

社団が「人」の集まりであるのに対し、財団は「財産」が法人格の基盤となっています。財団医療法人を設立する場合、個人や法人が設立に必要な資産(財産)を設立する医療法人に無償で寄付又は譲渡することになります。したがって、財産を寄付したものは持分を持つことはありません。

 



医療法人の概要について教えてください


 

以下にご説明します

医療法人とは、医療法の規定に基づいて「病院」、「医師若しくは歯科医師が常時勤務する診療所」又は「介護老人保健施設」を開設しようとする「社団又は財団」で都道府県知事の認可を得て設立される法人のことをいいます。


 






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