医業経営支援_福岡市中央区の長公認会計士事務所












決算賞与は未払いでも経費計上できますか?


 

いくつかの条件を満たせば可能です

業績が好調で多くの利益が見込まれるなら、決算賞与を出して、社員に還元してさらなるやる気を引き出したいものです。
ところが、決算期末ぎりぎりでなかなか資金繰りがつかず、期末までに支払いができないということもあり得ます。
そのような時、次の3つの条件を満たせば、実際に賞与を支払っていなくても決算賞与を経費計上することができます。

@決算日までに各人に支給額を通知すること。

A期末から1ケ月以内に支給すること。

B支給額を通知した事業年度に未払い計上すること。

以上、3点がポイントです。

 



役員の退職金はいくらまでなら経費になりますか?


 

功績倍率法とよばれる方法で役員退職給与を算定します

役員賞与は経費には認められませんが、退職金は経費に認められるので、大きな節税対策になります。
在籍年数が長く、職位が高い人ほど、多くの退職金が支払われるのが一般的です。さらに、役員については役員退職金規定により、通常、一般従業員より高額の退職金になります。
ただし、法人税法では、適正な額を超える部分は、経費にできないとされているので、注意が必要です。

一般的に功績倍率法とよばれる方法で役員退職給与を算定しています。
この方法を計算式であらわすと、次のようになります。

役員退職給与=退職時の最終報酬月額×在任期間×功績倍率

役員退職給与が過大かどうかの判定で税務上問題となるのは、功績倍率です。
なぜなら、功績倍率は決められた値があるわけではないので、これを利用して利益調整が行われやすいからです。

そこで、この功績倍率をどう決定するかが重要な問題となります。通常、会社に対する貢献度、前例、同業種・同規模の会社との比較により、倍率の数値を決めることになります。

しかし、実際問題として、他社の功績倍率を知ることは非常に困難です。税務署は管轄内の会社から提出された申告書をもとに算定することができますが、その資料は公表されておらず、会社は何らかの統計資料を入手して参考にするしか方法はありません。
一応の目安をあげると、一般的に功績倍率は代表者の場合、3倍までなら問題ないといわれています。


 



減価償却資産の有利な償却方法はありますか?


 

定額法と定率法の2つの方法があります

 減価償却について

機械や備品を取得した場合、取得に要した金額(取得価額)は、取得時に全額が必要経費となるわけではありません。その機械や備品の使用可能期間にわたって費用化します。
このように取得価額を費用として配分していく手続を減価償却といい、減価償却をする必要のある資産を減価償却資産といいます。
これに対し、土地や骨とう品などの資産は、時の経過等によって価値が減少するものではないため、減価償却資産とはならず、売却や処分をするまで費用を計上することはできません。


 定額法と定率法から選択

減価償却によって配分する費用はどのように計算するのでしょう。
まず、使用可能期間にわたって費用化するため、この機械は10年、この備品であれば5年というように、財務省令によって法定耐用年数というものが定められています。
この耐用年数に従って費用を計上していくわけですが、償却方法には、一般的な方法として、定額法と定率法の2通りがあります。

定額法 ・・・ 毎年一定の金額を費用化する方法
定率法 ・・・ 毎年一定の割合を費用化する方法


建物は定額法しか選択できませんが、その他の資産については自由に選択できることになっています。
最終的に費用化される金額は同じになりますが、定率法は毎年一定の割合を費用化していくため、定額法よりも早く費用化できます。
早く費用化するということは、資産取得当初の所得が圧縮され、課税を繰り延べることができるので、キャッシュフローの面では定率法が有利であるといえます。
ただし、開業当初の設備投資のようなケースでは、資産取得当初には利益が上がらず、定額法を採用するほうが有利な場合もあります。

 



医療機器等の優遇税制について教えてください


 

以下にご説明します

中小企業投資促進税制

 青色申告者である資本金1億円以下の法人

 青色申告者である従業員数1,000人以下の個人の事業所得者

 機械及び装置のすべて(1台:一式で160万円以上)

 一定の器具および備品(電子計算機、デジタル複合機。年合計で120万円以上)

 一定のソフトウェア(年合計で70万円以上)

 取得価額の30%の特別償却または7%の税額控除の選択適用

 平成29年3月31日までに取得し、事業の用に供するもの

医療用機器等の特別償却

 青色申告者

 高額な医療用機器等

取得価格500万円以上の医療用機械等で、高額な医療の提供に資するもの、または承認等を受けてから2年以内のもの
 取得価額の12%の特別償却

 平成29年3月31日までに取得し、事業の用に供するもの

 



旅費規定を作成するにあたって、注意点はありますか?


 

医療法人においては、理事自らが出張する機会も多いと思われます。
その1日当たりの出張旅費や日当は、旅費規程が整備されていないと、理事に対する報酬ではないかと疑われることがあります。
出張の日当が必要経費として認められるには、あらかじめ旅費規程を作成し、範囲と金額を明文化しておくべきです。

必要経費ではないと否認されるのは、どのようなケースになるのか見ておきましょう。

給与所得にならない出張旅費や非課税とされる旅費の範囲を認識しましょう

給与所得者が受け取る出張旅費は、その出張に必要な旅費の実費弁償であると考えられています。
必要な旅費には、新幹線や飛行機などの運賃、ホテルなどの宿泊費のほかに、出張中の食費や雑費の支出を補うための日当も含まれます。

これらの費用は出張の目的や目的地、旅行者の地位などによってさまざまであるため、そのすべてを実費精算するのは事務上ほぼ不可能です。
ですから給与所得者が出張旅費として支給を受けた金額が、その出張に通常必要と認められる範囲内であれば、所得税は非課税とされます。
その金額が通常必要と認められる範囲を超える場合には、その超えた金額については給与とみなされ課税されることになります。

給与所得者に対する出張旅費の具体的な非課税の範囲については、所得税法基本通達にある「非課税とされる出張旅費の範囲」を参考にするしかありません。
この通達によると、非課税の範囲内かどうかの判定にあたっては、つぎに掲げる事項を勘案することになっています。

 その支給額が、その支給をする使用者等の役員および使用人のすべてを通じて適正なバランスが保たれている基準によって計算されたものであるかどうか

 その支給額が、その支給をする使用者等と同業種、同規模の使用者等が一般的に支給している金額に照らして相当と認められるものであるかどうか

このように、通達は非課税の範囲についての考え方を示しているだけで、内容はあいまいです。
したがって、その支給額の設定については、同規模の同業他社の旅費規程などを参考に、支給額が必要かつ妥当と認められる範囲内であるかどうかを判断しながら旅費規程を作成しておくことです。

 



通勤手当の非課税限度額を教えてください


 

給与に加算するタイプの通勤手当とマイカー通勤についてご説明します

給与に加算して支払う通勤手当は、限度額までなら非課税です。
限度額は、電車・バスなど公共交通機関を使う場合、「経済的でもっとも合理的な経路を利用する通勤定期券代」などで月額150,000円まで。
自動車や自転車を使っている場合は、次の通りです。

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通勤している医療法人の院長先生は、役員報酬の一部を通勤手当として支給(非課税限度内で)すれば、自身の節税が図れます。

スタッフがマイカー通勤している場合は、その通勤手当は、一般的には、通勤距離 × 燃費 × ガソリン単価 で算定されます。

マイカー通勤を許可する場合、重要なのが、安全管理の問題です。
公共交通機関を使うより、マイカー通勤は事故にあう可能性が高いと思われます。マイカー通勤を許可したからには、事故について、院長先生や病院が責任を負うことになる可能性はゼロではありません。
仮にスタッフが通勤用のマイカーを業務で使用し事故を起こしてしまったら、院長先生や病院は間違いなく使用者責任を問われることになります。
ですから、マイカー通勤は基準を設けておいて慎重に許可し、かつ、万が一の場合の責任の所在も事前に明確にしておきましょう。


マイカー通勤許可基準例

 任意保険に加入していること(例:対人無制限、対物1,000万円以上)
 業務上の緊急の呼び出しが必要な職種あるいは業務であること
 公共の交通機関が利用できないこと
 身体上の都合によりマイカー通勤が必要であること
 点検整備が行き届いた車両であること
 過去に死傷事故歴および飲酒運転違反のないこと

 



社員の資格・免許取得費用は経費になりますか?


 

場合により非課税給与として扱うことができます

社員が資格や免許を取って、会社に貢献するというのであれば、会社としても積極的に奨励したいものです。
ところで、運転免許のように、その人が会社を離れても個人として使えるものの場合、その取得費用を会社が負担すると、給与を支払ったとみなされ、源泉所得税の対象になります。

しかし、その資格が職務に直接必要なものである場合に限り、例外的に会社負担額を非課税給与として扱うことが認められます。
具体的には、次のような支出の場合は、源泉所得税を徴収しなくてもよいとされています。

  会社が業務遂行上の必要に基づき支出するもの

 その社員の職務に直接必要な技術、知識、免許、資格を習得させるためのもの

 その習得のための費用として適正なもの

ただし、あくまでも「その社員の職務に直接必要な資格」ということがポイントです。同じ会社であっても、部署によって認められたり、認められなかったりします。たとえば、特殊重機の運転を常時必要とされない事務職員などについては、免許取得の必要性は認められません

 



永年勤続表彰品や創業記念品は経費になりますか?


 

一定の条件を満たしている記念品であれば、経費にすることができます

会社で永年勤続者、功労者、勤務成績優秀者等に、表彰金や記念品を支給することがあると思います。
これらも原則として給与扱いなので、源泉所得税がかかります。

しかし、永年勤続者の表彰記念品(金銭を除く)は、特別な取り扱いが認められています。
これは永年勤続表彰が一種の儀礼的な意味合いを持つからです。
具体的には、次の2つの条件のいずれにもあてはまる記念品であれば、所得税がかかりません。

  記念品の価額が、その社員の勤続期間等に照らして相当の価額であると認められる

 表彰の対象が、約10年以上の勤続年数の社員であり、2回以上表彰を受ける社員については、約5年以上の間隔をおいて行われる。

なお、商品券は金銭と同等のものとされ所得税がかかりますが、旅行や観劇については、非課税の取り扱いがあります。

創業記念、増資記念、工事完成記念などで支給される記念品等(金銭を除く)は、以下3つ条件を満たしていれば所得税がかかりません。

  社会通念上、記念品としてふさわしいものである

 記念品の価額(処分見込価額)が1万円以下(超えるものは全額が課税扱い)

 創業記念のように一定期間ごとに到来するものについては、相当の期間(おおむね5年以上)の間隔をおいて支給される

 



5,000円以下の飲食費は全額経費にできると聞いたのですが?


 

5,000円以下であるということと、いくつかの要件を満たせば経費にできます

税務上交際費とは、「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人がその得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」をいいます。

交際費は、支出した金額すべてが損金になるわけではなく、一定の金額しか費用には認められません。
しかし、要件を満たせば、認められます。
その要件とは、一人当たり5,000円以下で、

  飲食等の年月日

 飲食等に参加した人の氏名・名称・関係(得意先・仕入先・その他事業に関係のある者がいなければならない)

 飲食等に参加した者の数

 飲食にかかった金額、店の名前、所在地

また、飲食費については、もうひとつ節税の方法があります。
それは会議費です。
会議費とは、「会議に関連して、茶菓、弁当その他これらに類する飲食物を供与するために通常要する費用」をいいます。つまり会議に関連して出されるものであれば、飲食を伴っても交際費から除外することができるのです。

一般的に会議費は一人当たり3,000円程度であれば認められると言われています。乾杯程度であれば、お酒が入っても大丈夫なようです。

 



開業費の処理方法について教えてください


 

開業費に相当するものをきちんと整理することが重要です

医院を開業するにあたっては、さまざまな手続きや準備が必要であり、多額の費用が伴うことがほとんどです。
それでは、開業の手続きや準備にかかった費用はどう処理すればよいのでしょうか。

その年の収益に直接関係のあるもの、たとえば「薬品仕入」や「宣伝広告費」は、その年の必要経費に算入できます。それ以外の開業日までに発生した費用は開業費として計上します。

会計上、開業費は5年で均等償却と定められていますが、税務上は任意償却が認められているため、開業前の費用については開業費として一括で計上し、その年の収益を見て償却する額を決めるとよいでしょう。

ただし、開業前に購入した10万円を超えるパソコンや机、椅子などの固定資産や、返還されない保証金などの繰延資産は開業費にはできません。これらについては、きちんと分けて、通常の耐用年数に合わせて減価償却をしなければなりません。

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開業を思い立って準備を始めたときからかかった費用は開業費です。
何のための費用だったか記録しておきましょう。

 



不用資産を節税に活用することはできますか?


 

活用できます

活用されていない遊休不動産や必要性の低い役員用の高級車両といった不用資産を売却して含み損を吐き出すことで、利益が圧縮されて節税効果が生まれます。

さらに、資産の売却によりキャッシュ(現金・預金)が確保できることできます。
収益性が高い資産や、借入金の利率以上に値上がりが期待できる資産であれば、所有しつづけたほうが得です。

しかし、収益性が低ければ売却して、キャッシュとして会社の経営に活かすべきです。
売却により回収した資金や、損切りにより節税できた資金を借入金の返済や、収益性の高い部門に集中的に投資することが本当の意味での決算対策といえるでしょう。

 



貸倒損失の計上について教えてください


 

以下3つの場合について、貸倒損失を損金とすることを認めています

税法上の貸倒れは、社会通念上の貸倒れよりも厳格な要件を必要とし、次の3つの場合についてのみ貸倒損失を損金とすることを認めています。

 法律の手続きによる決定

たとえば、会社更生による計画の認可決定により、売掛金などの債権の一部が切り捨てられることがあります。
これは、会社更生法という法律により裁判所が債権の切り捨てを認めるものなので、切り捨てえられた部分が貸倒れとなります。


 関係者の協議による決定

たとえば、債権者集会などの関係者の話し合いで、売掛金などの債権の一部が切り捨てられることがあります。
すべての債権者が一定の割合で債権を切り捨てた場合など、合理的な基準により債権を切り捨てたときないは、切り捨てられた部分は貸倒れとなります。


 債務免除

債務者の債務超過の状態が相当期間継続しており、売掛金や貸付金などの債権の弁済が受けられないと判断できる場合があります。
このような場合には、債務者に対して債権を放棄する旨を書面で債務者に通知(債務免除の通知)すれば、その通知をした債権については貸倒れとなります。

債務者の資産状況や支払い能力などからみて、債権のすべてが回収できないことが明らかな場合には、法律上の債権放棄をすることなく、貸倒損失の計上が認められます。
つまり、法律的に債権が消滅していなくても、経済的な認識により事実上の貸倒れと認めようとする取扱いです。

たとえば、債務者の死亡、行方不明、破産などにより回収できないことが明らかな場合が該当します。
ただし、債権の“全額の回収不能”が要件のため、一部でも回収の見込みがあれば貸倒れにはできません。また、抵当権などの担保がある場合には、担保物を処分するまでは貸倒損失の計上はできません。

形式上の貸倒れには、債務者との継続的な取引を停止後一年以上経過した場合と、同一地域の売掛債権の総額が取り立てのコストに満たない場合の2つがあります。
この場合、備忘価額を残して、損金経理により貸倒損失を計上することができます。

たとえば1万円の債権の場合、帳簿に1円(備忘価額)のみを残して、残り9999円を貸倒損失とします。
ともに、売掛金、未収請負金など売掛債権に限定して設けられた特例ですから、貸付金には適用がありません。

 



決算期の変更は節税対策になりますか?


 

決算期の変更は、場合によって効果的な節税対策となります

医療法人に限られますが、今期利益が大きく出てしまいそうだというときにできる効果的な方法があります。
それは決算期の変更です。

例えば12月決算で、6月時点で利益が予想以上に出すぎてしまった。
こういう場合に決算期を6月に変更すると、今期の利益は1月〜6月までの6カ月分のみになります。
来期は7月〜6月までの1年間あるので、時間をかけてほかの節税対策をとることが可能になります。

一見、ただの先送りに見えますが、スポット的に利益が出すぎてしまった場合と、時間をかせげれば来期はほかの節税が可能となる場合に威力を発揮します。
法人でなくても、個人医院が医療法人になる場合も、法人の設立日を調整することで同様の効果を得られます。
ただし、各行政単位により設立時期が限定されている場合が多いので注意が必要です。


医療法人の決算期変更手続きは、以下のとおりです。

 定款の一部変更許可申請
 定款の変更
 税務署への異動届の提出

 



事務用消耗品は購入した時に全額経費になりますか?


 

要件を満たすことで、事務用消耗品は経費にすることができます

患者に薬を渡すときに使う袋やカルテなど消耗品の棚卸資産は、本来、期末在庫を確認し、経費からマイナスする(資産計上)必要があります。

払出高(経費) = 期首在庫 + 期中購入高 - 期末在庫

ただし、事務用消耗品や広告宣伝用印刷物等については、毎年同じ処理(取得した際に経費とする)を行なうことを要件として、取得した際に経費にすることが認められています。

 事務用消耗品
ノート等の文具類や事務用の用紙、お茶、衛生用品など、もっぱら事務室や診療室等における事務のために消費される物品

※使用可能な期間が通常1年未満の少額な物品(事務服・白衣等)についても、事務用消耗品に準じて取り扱うものとされています。


 包装材料

 広告宣伝用印刷物 典型的なのがパンフレットです。

毎年の継続適用で、購入時に経費にできます。

 



月払い家賃を年払いにしたら節税できますか?


 

「短期の前払費用」とし、家賃を今期の費用に計上することができます

通常、クリニックの家賃は、今期の支払分だけを費用に計上されていることでしょう。
しかし、家賃を毎月払いから1年払いにするだけで、前払いの家賃を今期の費用に計上することが可能です。

その要件は、「短期の前払費用」であることです。
「短期の」とは、実際に対価を支払った日から1年以内にサービスの提供を受けるものであり、「前払費用」とは一定の契約に従って継続的にその期間中同等のサービス提供を受けるために支出した費用のうち、今期末の時点においてまたサービス提供を受けていないものをいいます。

前払費用に該当する費用は家賃だけでなく、土地の賃借料、保険料、借入金利子なども該当します。
前払費用に該当するものをピックアップし、決算対策として備えておきましょう。


 



決算期に未払分の社員の給料を計上することはできますか?


 

給料の締め日が月末以外の場合に、未払費用を計上することが可能です

会社が支給する給料の締め日は、「15日締め」「20日締め」といったように月末以外のことが多いと思います。
給料の締め日が月末以外の場合は、締め日後の分を按分して未払費用を計上することが可能です。

たとえば、15日締めで25日払いなら、3月25日に支払う3月分の給料は、2月16日〜3月15日の分となります。
そして、3月16日〜31日分は、4月給料で支払われることになります。
3月決算の会社なら、この3月16日〜31日分を決算時に未払費用にして、大きな金額を経費に計上することができます。
社員に支払う毎月の給料の合計額が仮に500万円程度であれば、その約半分の250万円程度が経費になるわけです。

ただし、この未払費用は、給料について日割りの考え方が適用できる社員のみに適用できます。
役員は会社と委任契約の関係になるため、役員報酬には日割りという考え方は相容れません。
そのため、未払費用を計上することはできませんので、ご注意下さい。

 



労働保険料と社会保険料を計上する際のコツを教えてください


 

以下にご説明します

毎年5月20日は、労働保険の年度更新手続きの申告期限です。
労働保険は、労災保険と雇用保険からなり、いずれも前年4月1日から当年3月31日の賃金総額に基づき、当年度分の保険料を見積もって計算します。
これに、前年度分の確定保険料と概算保険料の差額精算分を加えて、申告することになります。
申告した保険料が40万円以上の場合は、5月20日に一括納付せずに、5月20日(第1期)、8月末(第2期)、11月末(第3期)の3回に分納することもできます。

法人税では、経費の計上時期は労働保険の申告書の提出時でもよいとしています。
つまり、分納を選択した会社は、5月20日に概算保険料の全額を未払計上して経費処理できます。
同じように、決算で未払計上できるものとして、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)があります。
社会保険料は、当月分を翌月末までに納付する後払いとなっているので、1ケ月分を未払計上できることになります。

 



出張手当について教えてください


 

出張旅費規定は、法人の規模や役職、業務内容で決めることが大切です

学会等の出張が多い法人なら、出張旅費規定を作成し出張手当を支給します。出張手当は全額経費になり、もらった側も所得税や住民税がかかりません。
出張旅費規定は、法人の規模や役職、出張における業務内容で決めることが大切です。
1つの例を示すと次のとおりです。

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慶弔や見舞金も、慶弔規程を作成し、社会的にみて過大でなければ法人側は経費として支給でき、もらった側も課税されません。
ただし、出張や慶弔の事実がわかるように、関係書類を整備しておくことが大切です。

 



生命保険の上手な利用の仕方を教えてください


 

以下に3つのポイントを挙げます

 個人の保険を法人に引き継がせる

個人で加入している積立型保険の契約および保険金の受取人を法人に変更すると、変更時点の解約返戻金分の金銭を法人から無税でもらえます。
もちろん、それ以降の保険料は法人が支払いますので、個人の保険料負担もなくなります。


 退職金として保険を譲り受ける

法人で掛けてきた保険を退職金として個人が譲り受ける場合、譲り受け時点の解約返戻金が退職金の額になるので、かなり有利な条件で保険の譲り受けができます。
譲り受け後は個人として掛金を支払うか、払済みにする方法があります。


 
ご子息には早めの保険加入

ご子息が役員になっていれば、保険料が損金として計上できる生命保険に早めに加入しましょう。
保険料は若ければ若いほど安くなる上、節税効果もあります。ご子息が非常勤の役員の場合、役員報酬額の多寡について税務調査で問題になりますが、保険料については、保険金の受取人が法人になっているので税務上、特に問題になりません。
逓増定期保険や長期平準型定期保険などは、一部歯止めがかけられましたが、一定の要件のもと契約すれば節税効果はまだ充分あります。

法人が支払った保険料は一定額まで損金となり、法人が受取った保険金は雑収入となりますが、この資金をもとに損金となる役員退職金を支払という節税方法が一般的です。
複雑な保険商品も多いので、当事務所に一度ご相談ください。

 



役員社宅の有利な使い方を教えてください


 

役員の住宅を法人で取得することで、節税対策につながります

役員の住宅を法人で取得すると、借入金の利息、固定資産税、建物の減価償却費などを法人の経費にすることができます。
ただし、居住している役員個人は法人に家賃を支払う必要がありますが、次の算式で算出した金額で法人へ家賃を支払えば、相場の半分以下でも課税問題は生じません。

 自社所有の住宅の場合

{(家屋の固定資産税の課税標準額)×12%※+(敷地の固定資産税の課税標準額)×6%}×1/12=月額支払家賃

※木造以外の家屋の場合は10%

上記で計算した家賃は、通常、相場の家賃の40%くらいになります。
ただし、床面積が240u以上の豪華な社宅や、240u以下でもプール付きや茶室のある豪華なものは、相場の賃料を支払わなければなりません。
社宅取得時に豪華社宅に該当しないかどうか注意が必要です。


 小規模社宅の場合・・・床面積が132u以下(木造以外の家屋は99u以下)

(家屋の固定資産税の課税標準額)×0.2%+12円×家屋の床面積/3.3u+(敷地の固定資産税の課税標準)×0.22%=月額支払家賃
上記で計算した家賃は、通常、相場の家賃の30%程度になります。


 借上げ住宅

一般住宅を借り上げて社宅とする場合は、実際に支払っている家賃の50%と上記算式の徴収すべき家賃を比べ、高い方を支払います。
通常は、実際に支払っている家賃の50%となります。

 



役員給与の決め方、変更の仕方はどうしたらよいでしょうか?


 

役員数を多くすることにより、役員給与を分散させ税金を少なくします

役員給与を多く出せば、それだけ法人の利益は少なくなり、法人の税金は減ります。しかし、役員個人の税金は増えてしまいます。
そこで、役員と法人の税金を抑えるには、新たに役員として家族を入れ、役員数を多くすることによって役員給与を分散させ、所得税の累進税率を軽減させることにより、全体で支払う税金を少なくします。
ただし、名ばかりの役員で業務実績がないと、税務調査で否認されてしまうので注意が必要です。
家族役員には必ず業務を与えてください。

また、法人の利益が相当出ていれば、「理事長である院長が要」といえる病医院では、理事長の給与が過大であると否認されることは、まずないとみてよいでしょう。
そのかわり、期中に定期(毎月)同額で役員給与が支払われていないと、恣意的な利益調整があったとみなされ、定額を超える給与は、原則損金に算入できなくなりました。

また、役員給与は原則として期首から3カ月を過ぎたら変更できません。
つまり、3月決算であれば、役員給与の改正は6月までに行い、それ以降は変更できないものと理解してください。
もちろん、役員給与には過大給与という概念があるので、名ばかりの役員で相応の業務を執行していないと当然、税務否認の対象となります。

 



決算が近いのですが、今からできる節税対策はありますか?


 

お金の支出を伴う対策と、伴わない対策があります

決算直前の節税対策には、「お金の支出を伴わない節税対策」と「お金の支出を伴う節税対策」があります。

(1) お金の支出を伴わないもの

1.給与締め後から決算期末までの給与分を未払いで計上する
2.未払金、未払費用を漏れなく計上する
3.不使用・不良の固定資産を除去する
4.不良債権となっている未収金を回収不能として債権放棄するなど


(2) お金の支出を伴うもの

1.消耗品になるものを購入する
2.修繕費となる修繕を行う
3.HP作成や広告宣伝費を使う
4.期末に翌年1年分の地代家賃を支払うなど

一例を挙げましたが、細かい適用要件があるものや契約変更などが必要なものも含まれています。
決算直前の節税でお困りの方は、一度ご相談ください。

 



車両の購入を考えていますが、税務上新車と中古車どちらが有利でしょうか?


 

ずばり中古車がおすすめです

ベンツを例に説明しますすと、新車のベンツは1,000万円もしますが、発売から4年経った中古であれば400万円程度で購入できます。

新車の場合は耐用年数6年ですが、4年落ちの中古車であればその耐用年数は簡便的に次のように算定することになります。
(新品の耐用年数6-新品から経過した年数4)+経過年数4×20%=2.8年→2年

この場合、減価償却費は次のようになります。

新車の場合:1,000万円×0.334=334万円(耐用年数6年の償却率=0.334)
中古車の場合:400万円×1.0=400万円(耐用年数2年の償却率=1.00)

中古の耐用年数が2年であれば、中古車購入代金がまるまる減価償却費として経費となり、大きな節税メリットを得る事ができます。

病医院の経営環境が悪化しているなかで、あまり高額の車代金を支払うことが経営上好ましくありません。
ベンツの中古ならそれなりの値段で買え、しかも、しっかりとした中古車市場はあるので高値で売却できる、大変優れた節税商品といえます。

 



ホームページの製作費は経費になりますか?


 

全額経費とすることができます

ホームページの内容は一般的に頻繁に更新されるため、支出時に全額経費とすることができます。
また、ホームページ上で予約ができるシステムの作成費用等は、ソフトウェアの開発費用に該当し、5年で均等に経費化していきます。

業者からの請求書が「ホームページ作成費用一式」と記載され、ホームページ費用とソフトウェア費用が区分されていないと、全額をソフトウェアとして計上することになりますので、きちんと区分された明細書をもらうようにしてください。

 



海外出張旅費は経費になりますか?


 

業務上の必要な経費であることを証明することがポイントです

医学会等に出席するための出張に要する旅費や日当は、医師としての業務を遂行するために必要と認められている費用です。
ただし、海外で学会が行われるときなど、せっかくの機会だからと観光を兼ねたり、家族を同伴したりすることがありますが、観光費用や家族の旅費は必要経費になりません。

海外出張について、税務調査では、「観光が主目的で、業務的な体裁を整えているだけではないか」という視点でチェックすることがあります。
そこで、海外出張旅費を経費として処理するには、それが業務上の必要な経費であることを証明できるようにしておく必要があります。
そのためには、次のようなポイントが大切です。

 医学会の日程表や配布資料を保存整理する。

 業務上必要とされる部分と、それ以外の部分を区別して経費処理する。業務と観光それぞれに費やした日数で旅費を按分し、経費計上することも認められている。

 家族同伴はなるべく避ける。同伴した親族の旅費を経費にできるケースは、夫婦同伴パーティーが予定されている国際会議への出席の場合など、限られています。

 パックツアーの場合は、よりしっかりと業務関連の資料を整備・保管する。元来が観光目的のツアーなので、十分に業務を行った証拠を整備しておく必要がある。

 海外旅費規定を整備しておく。国内の旅費規定と同様、海外旅費規定があれば、日当宿泊費を実費精算によらずに経費処理ができる。

 



残業食事代は経費になりますか?


 

福利厚生費として経費とすることができます

残業した人や宿日直した社員への夜食代は、原則として福利厚生費として経費とすることができます。
社員に課税されることはありません。
ただし、その金額を1人あたり1,500円までなどと上限を定めているところが一般的です。
なお、税務調査に備え、残業や宿日直した事が客観的にわかる証拠を残しておくこと必要です。

 



社員旅行は経費になりますか?


 

社員旅行は経費になりますが、内容により費目が異なります

経費にはなりますが、社員旅行の内容や実施方法などで、@福利厚生費となるもの、A給与所得とされるもの、B交際費とされるものがあります。

 福利厚生費となる要件

・4泊5日(海外旅行の場合は、目的地で4泊)以内であること
・50%以上の社員が参加すること
・1人あたり10万円程度の費用であること


 社員の給与とされるケース

・自己都合で不参加となった社員に対して金銭を支給するとき
・旅行費用が高額であるとき
・一定ポスト以上の社員のみを対象として行われたとき


 交際費とされるケース

・豪華なホテルや豪華な宴会・余興


 



交際費はどこまで必要経費になりますか?


 

必要経費にするには、経営に直接 結びつく経費である必要があります

個人病医院の場合には、薬剤費、診療材料費、医療器械の保守点検料、院内清掃料など、経営に直接結びつく経費(直接経費という)でないと、必要経費には認められません。

交際費は、事業関係者などに対する接待、慰安、贈答などのためにする支出です。
「経営に直接必要な交際費はないはず。交際費のほとんどは実質的には院長の個人的な経費であり、一歩譲ったとしても、間接的な経費である」と頭から決めつける税務調査官もいます。
しかし、患者さん紹介のお礼、レントゲン読影のお礼、税理士へのお礼などのために支出される交際費は、収入増加、的確な診療実施、節税による経営資金の増加など、個人病医院の経営に直接結びついた経費として認められるものです。

実務的には、接待飲食代の領収書に「・・・に対するお礼」などと記載し、経営に直接必要な経費であることがわかるようにしておけば、
簡単に税務否認されることはなくなります。

 



家事関連費は必要経費となりますか?


 

業務に直接必要であることを立証する必要があります

1階は診療所、2階は自宅としているような場合、水道光熱費、固定資産税、地代家賃、火災保険料などは、事業用部分と家事用部分が混在して請求や支払がされています。このような経費を「家事関連費」といいます。
家事関連費を必要経費にするためには、その費用が業務に直接必要であることを立証する必要があります。

まず、診療所部分と自宅部分に、メーターなどを別々に設置できるものは設置して、診療所で使用した料金を明確にし、自宅で使用した料金のうちどれだけ事業用に直接使用したかを区分することが節税のポイントとなります。
自宅部分であっても、書斎や応接間など、実際は事業のために使われている部分が多くあれば、その部分も考慮して合理的に費用を按分するのが節税のコツです。

 



これだけはやっておくべきという節税対策はありますか?


 

小規模企業共済、国民年金基金への加入をお勧めします

(1)小規模企業共済への加入

小規模企業共済は、老後の生活資金を確保するためにもぜひ加入をおすすめします。平成23年1月より院長先生だけではなく、専従者である院長婦人も加入できます。
小規模企業共済は、中小企業事業主のための退職金制度であり、診療所を廃業し、退職した後の生活資金をあらかじめ用意しておくための公的制度です。

共済金の受取りは、一時払い(退職所得)または分割払い(公的年金等の雑所得)を選択することができ、どちらも税制上優遇されています。
加入すると月額1,000円〜70,000円の掛金を納付することになりますが、この掛金全額が「小規模企業等掛金控除」として所得金額から控除できます。

年間支払額は最大で84万円となるため、最高税率に達している院長先生の場合には、所得税.住民税で年間42万円の節税になります。
まだ未加入であれば、年末までに加入し、最高限度額の84万円を一括払いして節税することをお勧めします。


(2)国民年金基金への加入

国民年金基金は、自営業などの国民年金の第1号被保険者を対象に、国民年金に上乗せした年金を受取るための公的な年金制度です。年金受取時は、公的年金等の雑所得の扱いとなり税制上優遇されています。

掛金は月額6万8,000円(年間81万6,000円)が限度額ですが、その掛金全額が「社会保険料控除」として所得金額から差引くことができます。
小規模企業共済と同様、年末までに加入し、年末までに年間限度額を一括して支払い、節税することができます。

 



青色事業専従者に支払った給与は、いくらまで経費になりますか?


 

適正額の目安は以下の通りです

適正額の目安は以下の通りです。

(1)専従者が医師の場合

院長の所得を基準(客観的にはレセプトの金額に比率)に、若干低く定める

(2)薬剤師など資格を有している場合

薬剤師の給与に事務員の給与を加算し、年間800万円〜1000万円

(3)資格はないが、実質的に事務長の場合

院長の事業所得が2,500万円以上なら、年間700万円〜800万円専従者給与を支給して所得を分散すれば、全体の税金を軽減することができるため、税務調査ではその適正が争点となることがあります。

税務否認されないためには、事務方であれば日頃の経理、給与計算、業者への支払い等だけでなく、銀行との打合せや経営セミナーへの参加など、従業員ではできない多大な貢献をしていることがわかる証拠を揃えておくことが大切です。

専従者給与の額は、税務署に届出した範囲内で支給しなければならないので、実際の支給額より若干高くして届けるのがポイントです。
なお、専従者には退職金を経費として支払うことはできません。


 



「青色申告」とはどのような制度ですか?


 

以下に、青色申告の特典や適用要件についてご説明します

(1)青色申告の特典

■開業医の場合

所得税の青色申告には下記のような特典があります。

.生計を一にする親族に支給した給料を必要経費に算入できる。
.損失が生じた場合は3年間の繰越控除ができる(繰戻還付も可能)。
.65万円の青色申告特別控除を所得から控除できる(小規模事業の場合は10万円)
.業務に直接必要な家事関連費を必要経費に算入できる。
.売掛金等に一定率をかけた金額を貸倒引当金として計上できる。
.中小企業者に該当する個人は30万円未満の少額減価償却資産を一括して必要経費算入できる。
.割増償却、特別償却で課税所得を減らせる。
.所得税額から各種特別控除額を控除できる。


■医療法人の場合

.欠損金が生じた場合は、7年間の繰越控除ができる。
.中小法人は、欠損金の繰戻還付が可能となる。
.特別償却、各種準備金の計上により課税所得を減らせる。
.所得税額から各種特別控除額を控除できる。
.中小企業者等は、30万円未満の少額減価償却資産を一括損金算入できる。



(2)青色申告の適用要件

 青色申告には上記のような特典があるかわりに、いくつかの適用要件があります。

.すべての取引を複式簿記により整然かつ明瞭に記帳しなければならない。
.仕訳帳、総勘定元帳等の帳簿を作成、整理、保管する必要がある。
.青色申告書に貸借対照表及び損益計算書を添付する必要がある。
.帳簿書類(契約書、領収書等を含む)を7年間、整理保管する必要がある。
.期末に棚卸資産の棚卸等決算整理を行ない、記録することが必要。

(3)青色申告になるための手続き

■開業医の場合

.青色申告を認めてもらうには、申告書を提出しようとする年の3月15日までに、青色申告の承認申請書を税務署長に提出しなければならない。

※新規開業の場合、業務を開始した日から2か月以内に申請が必要。

■医療法人の場合

.申告書を提出しようとする事業年度が始まる日の前日までに、青色申告の承認申請書を税務署長に提出しなければならない。

※設立第1期目については、設立日から3か月後と決算日とのどちらか早い日の前日までに申請が必要。

なお、青色申告承認申請書は毎年提出する必要はありません。提出後は自動的に承認されます。

 




長公認会計士事務所は福岡県中央区を拠点にした医業経営支援に力を入れている税理士事務所です