医業経営支援_福岡市中央区の長公認会計士事務所












譲渡金額や賃借料の計算方法を教えてください


 

個人経営の病医院を第三者へ承継する場合、譲渡金額や賃借料はどのように計算するのでしょうか。

承継する個々の財産金額の合計額になります

まず、譲渡金額の考え方ですが、個人経営の病医院を第三者へ譲渡する際の譲渡金額(承継金額という)は承継する個々の財産金額の合計額になります。

例えば、承継する財産が土地と建物だけであれば、土地と建物のそれぞれを評価し、その評価額の合計額が承継金額となります。財産には、プラスの財産(資産)とマイナスの財産(負債)があります。資産とは、土地や建物、医療機器等をいい、負債とは、買掛金や未払金等をいいます。

承継金額を計算するときには、承継する資産の評価額の合計額から承継する負債の評価額の合計を控除した金額となります。資産の中には、営業権という目に見えない資産があります。営業権とはいわゆる暖簾(のれん)のことであり、その病医院が他の同規模・同診療科目の病医院と比較して、高い収益力を有する場合の、将来の超過収益力に対する対価を意味します。

営業権の算定方法にはいろいろな考え方がありますが、必ずしも承継金額に含まれるというものではありません。 

次に賃借料の考え方ですが、建物を賃借した場合の家賃や土地を賃借した場合の地代は、近隣の賃借相場を参考にして決定します。建物の家賃については、参考にする物件の用途(事業用かどうか)、構造、建築年数にも着目して決めます。

また、賃貸借契約の締結の際に保証金を設定して、一時的な資金を得る方法もあります。

 



理事長引退後でも給料をもらっても大丈夫でしょうか?


 

私は、近く医療法人の理事長を子に譲ろうと考えています。ただし、理事長は引退しますが非常勤の医師として引き続き勤務する予定です。そこで、勤務する以上は給与をもらいたいと思うのですが、問題ないでしょうか。

様々な状況に照らして判断されることになります

理事長を退いたとしても、引き続き非常勤医師として、また、非常勤の理事として勤務するのであれば、その給与が適正額かどうかは、理事長退任後の職務内容、医療法人の収益や使用人に対する給与の支給状況、また、他の医療法人における役員報酬の支給状況に照らして判断されます。その結果、不相当に高額であると判断された場合には、その不相当に高額な部分の金額は、過大役員報酬とされ医療法人の損金(経費)となりません。

 



事業承継後に診療を続けますが退職金をもらえますか?


 

私は医療法人を設立して病院を経営していますが、このたび子に理事長を譲ることになりました。ただし、私もしばらくの間は診療を続ける予定なのですが、それでも退職金をもらえるのでしょうか。

法人税法上、適正額が損金(経費)となります

理事長引退後も引き続き勤務する場合には次の要件を全て満たす場合に限り退職給与として認められ、法人税法上、適正額が損金(経費)となります。

@ 非常勤役員への降格、報酬の激減(おおむね50%以上減少)など、職務内容や地位が激変したことにより退職に準ずる事実が生じたと認められる。

A 今後非常勤役員等も退き本当に退職するときに、そこで支給する退職金の算定上、今回支給する退職金の算定の基礎とした期間を一切加味しないこととしている。

B 形式だけでなく実質的にも現在の地位を退き、今後法人の経営上の主要な地位を占めるようなことはない。
以上の要件を満たさないのに支給した場合には役員賞与とみなされ、支払った医療法人の側では損金(経費)になりませんし、受け取った個人の側では退職所得ではなく給与所得として課税されてしまいます。仮に、勤務20年の理事長が退職し、退職金1億円程度支給したとすると、所得税・住民税の金額は倍以上になってしまいます。

さらに、注意していただきたいことは、質問のケースで上記@〜Bの要件を満たし、退職所得として認められる場合でも、適正額を超える部分の金額は過大役員退職金として損金となりません。一方、役員退職金を受け取った個人に対する所得税の課税は、法人税法上、過大役員退職金として取り扱われる部分の金額についても、退職所得の収入金額として取り扱われます。

 



医療法人の出資持分を移転について教えてください


 

医療法人の出資持分を移転するのであれば、役員退職金などの大型経費の支出があるときに実行すると、より効果的であると聞きました。その理由を教えてください。

医療法人の出資持分評価は法人の利益、純資産の額に左右されます

医療法人は配当が禁止されているため、税引後の利益全額が法人内部に蓄積されます、そのため、医療法人が赤字でない限り、純資産が膨らみ、出資持分評価は年々高くなります。この状態で出資持分評価額は年々高くなるため、利益、純資産の額の引き下げを行った後に移転するのが効果的です。利益、純資産の額を引き下げるには、大型経費の計上が最も簡易な方法です。例えば、役員退職金の支出、設備投資による減価償却費の計上等です。ただし、過大な役員退職金の支出により税務否認を受けないようにすることや、大型支出のため医療法人の資金繰りを考慮することなどの注意が必要です。

 



医療法人の出資持分は早めに移転した方がよいのでしょうか?


 

医療法人の出資持分は早めに移転した方がよいと聞きましたが本当でしょうか。また、その理由も教えてください。

出資持分の評価額が低いうちに出資持分の移転を早期に実行したほうがよいでしょう

医療法人の出資持分評価を算定する方式には、類似業種比準価額方式、純資産価額方式及び両者を組み合わせて計算する方法があります。後者2つの方式を採用する際には、純資産(資産額−負債額)が減少すれば出資持分の評価額も下がります。 一般法人のように利益の一部を出資者に配当すると、現預金が社外に流出し、その分だけ法人の純資産は減少しますが、医療法人は法律上配当が禁止されているため、獲得した利益を配当金として社外に流出することができません。 したがって、税引後の利益が法人内部に年々蓄積され資産となり、出資持分の評価額がどんどん高くなっていきます。場来の相続税負担を考えた場合、出資持分の評価額が低いうちに出資持分の移転を早期に実行したほうがよいでしょう。

 



「相続時精算課税制度」を実際に活用する際の注意点等を教えてください


 

3つの注意点をご説明します

贈与者である親が亡くなった場合には、相続財産の価額に「相続時精算課税制度」を適用した贈与財産の価額を加算して相続税を計算します。 

この場合、既に支払った贈与税額を相続税額から控除し、控除しきれない金額は還付されます。読んで字のごとく、相続時に精算する制度なのです。 また、次の内容に関しての注意が必要です。

@ 一度選択すると相続時まで継続され、暦年課税(110万円控除して累進税率を掛ける方法)には戻れません。

A 贈与財産が将来値下がりした場合にも、相続財産に加算する価額は贈与時の価額になります。

B 贈与財産が滅失しても、その財産の価額を相続財産に加算します。

 



親族への事業承継のポイントについて教えて下さい


 

時間をかけた事前の対策が必要となります

最も一般的な事業承継ですが、時間をかけた事前の対策(相続対策など)が必要になります。また、事前の対策をするのとしないのではかなり違いがでるケースが多いです。

(1)事業が個人経営の場合

相続になった時、原則として亡くなった方の所有する財産は、相続人への分割対象となります。
したがって、事業を継続するために必要な事業用財産も分割対象に含まれることになります。
後継者以外の相続人に分割されると事業承継できない場合も想定されます。
永続的な医療の継続という社会的使命のためにも、生前贈与や遺言等事前対策が大切になります。

(2)事業が医療法人の場合

医療法人を事業承継する場合に考えなくていけないのは、医療法人は所有と経営が分離しているため、出資持分(財産権)の承継と理事長職(経営権)の承継が必要になります。
出資持分(財産権)の承継とは、医療法人に出資した持分相当を譲渡、贈与、相続によって親族に承継することです。
現金や土地、建物等を出資して医療法人を設立した場合、その出資した持分は相続税の対象財産になります。通常この出資持分は、医療法54条で配当禁止されていることもり、出資当初よりかなり財産価値が増加しているケースが想定されます。
そこで事前対策を行うことにより出資持分の評価の引き下げが可能かどうかを検討していく必要があります。
次に理事長職(経営権)の承継については、後継者である親族に理事長職を譲る(理事長の交代)ことです。
社員総会や理事会等きちんとした諸手続を経る必要があります。ここで注意したいのは役員職である理事(長)職と合わせて、医療法人の最高決議機関である社員総会の構成員である社員の立場の承継も忘れずに行うことです。

 






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