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【相続税対策の考え方】

「節税」を考える際に、最もしてはならない間違いは何でしょうか?
これは相続税だけでなく、所得税、法人税等にも言えることですが、「節税は手段であり目的ではない」ということです。
節税が目的ならば簡単です。

相続税を少なくしようと思えば死ぬまでに全部使ってしまえばいい訳です。
これなら税金は掛りません。でも何か大きく違います。これでは大切な奥さんやお子さんに財産が残らないから意味がありません。

「目的」は「節税すること」ではなく、「できるだけ多く強い財産を残すこと」でしょう。
「節税」はその「目的」を果たすための「手段」だということを忘れてはいけません。
これを忘れると、例えば、安直に相続税のことだけを考えて、収益マンションを購入し、建物や土地の評価を利用して相続税を下げても、相続の後、そのマンションが空室だらけになり、家賃で借入金が返済できなくなることだって十分に考えられます。

相続税対策の多くは資産の組み換えが伴います。
ただ、それは相続後に大きな影響を与える可能性があることを忘れてはなりません。

節税には、

 相続財産自体を減らす方法(生前贈与、相続時精算課税制度の活用等)

 相続財産の評価を下げる方法(収益マンション建築等)

 基礎控除を大きくする方法(養子縁組)

 税額控除の活用(配偶者の相続割合で調整等)

がありますが、どれもデメリットがないわけではありません。
相続対策には節税方法のメリット、デメリットを理解して、将来の予測も踏まえた上で慎重な判断が必要です。



【相続税健康診断結果判定】

 相続税はゼロ

 相続税は小額で、十分支払ことが可能です。

 相続税は多額ですが、なんとか支払えそうです。

 相続税が多額で支払うだけの資金がありません。


<コメント>  B、Cの場合、信頼できる専門家に相談することをお奨めします。

また、@、Aの場合でも、分け方(遺産分割協議)で揉めることがありますので、そのような場合にも信頼できる専門家に相談されることをお奨めします。

コラム 聞いた話ですがD  〜 この証書は父の金庫に入っていました 〜

父親を亡くされた2人の息子さんの相続。税額は長男1500万円、次男500万円。
調査の際、相続財産に入れてなかった次男名義の定期預金1000万円について尋ねられた。

「証書はどこにありましたか?」。

兄弟の仲があまりよくない長男は少し意地悪してやろうと、
「この弟名義の預金は父親が管理していたこの金庫の中に入っていたんです」
と言った。

「そうですか、では名義預金ですね」と修正申告に。

もちろん長男は次男にだけ修正申告をさせて相続税を支払わせようと考えたのです。
ところがどっこい、全体の相続財産が増えるので、相続税の計算上、追加で納付するのは次男だけでなく長男も支払うことになるのです。

それを知った長男は税理士に、
「先生、今から実は弟が持っていたって訳にはいきませんか」

「それはちょっとできない相談ね」。
ご注意を!



【相続税を支払えるかどうかのチェック】

 相続税の金額

 支払資金の内訳


自宅の土地

単価の高い土地の場合、そのまま高い単価では、相続税を支払うために自宅を売却しなければならないようなケースもありえるので、自宅の土地の評価については、負担を軽くするための一定要件を満たした場合、特例が適用できる。(小規模宅地の特例)

※小規模宅地の特例は自宅の土地の他に事業用宅地(最大400u・80%)も選択可能。


計算例
相続財産25,000万円 配偶者あり※(子供2人) 1,134万円
相続財産50,000万円 配偶者なし※(子供2人) 13,800万円
※ 配偶者の有・無で適用する相続税早見表が異なる

配偶者ありの早見表での計算は、配偶者の税額軽減をフル活用して、1次相続の税額をもっとも低く抑えた場合の計算をしているので、2次相続の際の税額を計算して、1次2次と合わせた相続税額を試算してみる。

コラム 聞いた話ですが 〜7年経てば時効だから大丈夫!? 〜

よく誤解されているのが、「子供名義にしているから大丈夫!」とか、「税金は7年経てば時効だから大丈夫!」ということ。
税金を勉強していた相続人さんが「10年以上も前に子供名義の預金にしてあるので相続財産になることはない。
もし税務調査で指摘されても、贈与して申告するのを忘れていたと言えばいい」といって、名義預金を申告していませんでした。

しかし、調査の際に署から「では贈与していたことを立証してください」との指摘。
そう、子供名義にしていても、実質の管理者が被相続人であれば、それは「贈与自体の事実がない」との見解になる訳です。

預貯金等を子供名義にはするけど、まだ子供に自由に使わせたくないからと、管理は親のままになっていることは多々あります。
しかし、その場合には、このケースのように贈与の事実が否定されることもあるのです。
ご注意を!



【相続税健康診断スタート】

相続税の概算計算

法定相続人は何名ですか?

人数を「イ」に記入して、下記算式で計算してください。

3,000万円 + 600万円 × イ  [      ]  =  [      ] ←基礎控除の金額


相続財産の総額は明らかに基礎控除(上記の金額)の金額以下

Yes
→相続税の心配はありません。
但し、相続財産の分け方で揉める場合もありますのでご注意を!

No
→相続財産の総額を計算する必要あり  → Bへ


相続財産の評価は原則「時価」です。しかし、この「時価」が難しい。
分かりやすい財産では、現金、普通預金、これらは実残高や通帳残高になりますが、先祖代々の土地や不動産、価格の変動する上場株式、取引のない自社株など、時価査定が困難な財産も多いため相続財産を評価する際には一定のルールが決まっています。
つまり、最近買った土地や建物でも買った価格ではなく、このルール(財産評価基本通達)によって、評価されます。


土地の評価方法

路線価方式 又は 倍率方法 (地域によって定められています)

路線価方式

路線価は、国税局長が決定した道路ごとの土地の単価であり、基本的にはこの路線価に地積(面積)を乗じた金額を評価額となる。


倍率方式

固定資産税評価額に評価倍率表に示してある倍率を乗じて、土地評価額とする。
宅地は固定資産税評価額の1.1倍〜1.2倍



【相続税健康診断の目的】

1. 相続税、本当に大丈夫?

「相続税なんて我家には関係ないわ」と言っておられる資産家の方もあれば、税金の心配はほんとうにいらないのに不安がっている人も沢山います。
心配いるのか、いらないのか、一度考えてみましょう。

相続財産が、相続税健康診断の「相続税の健康診断スタート」でお話しました基礎控除以下であれば、本当に税金の心配は無用です。
また税金が掛る人はどのくらい掛るのか計算してみましょう。正式な相続税の計算は財産評価から始まり、計算過程も複雑ですが、大まかな評価で、早見表を使えば概算はつかめます。


2. 相続税の目安

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上記が配偶者の有無で場合分けをした相続税の目安です。
「高い」か「安い」かは、その人の感覚的なものですから一概に言えませんが、「えっこんなに!」と思われる方もいれば、「あら、こんなもんなの?」と思われる方もおられるでしょう。


3.相続税は掛らないけど大丈夫?

健康診断の結果、相続税はゼロ又は小額で十分払える場合でも、それは相続税の心配が不要なだけで、相続の不安が無くなるわけではないことにご留意ください。

税金問題ではなく分け方で「争族」にある場合も多いようです。



【相続税と贈与税】

相続税は被相続人が亡くなって財産が移動する場合に掛る税金で、贈与税はなくなる前に財産を移動させる場合に掛る税金です。
当然タイミングが計れる贈与税の方の税負担が大きくなっています。

下記の図を見比べてください。相続税の最も高い税率50%が3億円以上に掛るのに対して、贈与税は1000万円を超えると50%になっています。
また、タイミングが計れない相続税のみ物納(現金以外の財産で税金を支払う)が可能です。


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【相続税の計算の流れ】

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相続財産にはプラスの財産もマイナスの財産(借入金)もある。
借入金が多い場合は相続を放棄することもできる。


step3

相続税を計算する際にはまず、法定相続分通りに分けたとして、
相続税の総額を計算し、最後に実際の分け方で按分する。


step4

step6



配偶者は税額軽減があるので、法定相続分または1億6千万円まで相続しても、税額がゼロになる。
また、相続税の税額控除には、配偶者の税額軽減の他に、未成年者の税額控除、障害者の税額控除等がある。


コラム 聞いた話ですがB ~相続税の調査の現場で学んだインフレの脅威〜

税務調査の現場で、申告書に載っていない金融資産の証券が見つかった。
古い机の引き出しの奥の底から目覚めた墨で書かれたその証券は大正時代の「貸付信託」。その金額なんと壱千円。

当時は1カ月の給料が数円の時代だから相当な大金です。
そして驚いたのは、その証券まだ生きていたのです。
80年以上運用されてきたこの金融商品。
いくらになっていたと思いますか?5000万円?1億円?・・・・・。

それがなんと4万3千円! 「へっ?」って思われる方も多いと思いますが、冷静に考えると43倍になっているのです。
おかしくはないのです。
ただ運用されて来た期間のインフレが、43倍よりもずっと大きく進んでしまって、証券の価値が無くなってしまったのです。
もし、仮に貸付信託ではなく、インフレに強い資産、株や、土地を購入していたら、数億円になっていたかも知れません。
資産の持ち方も考えなければいけません。

ご注意を!



【相続財産を受け取ることができる人は?】

法律により、被相続人の死亡の時に、相続の権利があると定められている相続人のことを、法定相続人といいます。

被相続人の配偶者は常に法定相続人となります。
ただし、内縁関係、事実婚(婚姻届を出していない)のパートナーはどんなに長く連れ添っていたとしても、相続人にはなれません。
但し遺言書を作成しておけば受遺者として相続させることができます。

配偶者以外の相続人(血族相続人)には順位があります。

第1順位
被相続人の子(直系卑属)が相続人となります。
子がすでに死亡している場合はその子(被相続人の孫)

第2順位
直系卑属がいない時、被相続人の父母(直系尊属)が相続人となります。

第3順位
直系卑属も直系尊属もいない場合は、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。


法定相続分は、血族相続人が第何順位かで変わります。

配偶者と第1順位 配偶者1/2 残り1/2を人数で割る
配偶者と第2順位 配偶者2/3 残り1/3を人数で割る
配偶者と第3順位 配偶者3/4 残り1/4を人数で割る

※ 養子と実子の扱いは同じですが、非嫡出子や半血兄弟姉妹など、法定相続分が上記と異なるケースもあります。

 

 

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【相続税の申告が必要なケース】

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基礎控除の金額(3000万円+600万円×法廷相続人の数)を正味の遺産額が超えると相続税の申告や納付が必要となる。
この基礎控除の金額が大きいため、相続税が発生する件数は少ない。
※ 相続財産の評価をする際に特例を適用した場合には、相続税はゼロでも申告は必要となる。

 

コラム 聞いた話ですがA ~借金をすれば相続税は少なくなる?

「借金をすれば相続税は少なくなる」これは正しいでしょうか?それとも間違いでしょうか?

正解は「間違い」です。

間違えた方は冷静に考えてください。借入金をすればそれと同じだけ現金や預金が増えます。
つまり、借入をしただけならば、同額の現金や預金が増えるのですから、相続財産の合計に変動はありません。

ではもうひとつ質問です。

「建物を建てる又は購入すると相続税は減少する」これはどうでしょう?

実はこちらが正しいのです。
相続税を計算する際の財産の評価は、買った値段に関係なく、一定のルール(財産評価基本通達)に基づいてなされます。
建物の評価は買った直後でも、購入金額の5割前後の評価になることが多いようです。
つまり、現金で1億円もっていれば、評価は1億円になりますが、この1億円で建物を買うと、評価は5000万円くらいのなる訳です。

「借入れをして建物を買うと相続税対策になる」とよく言われますが、この節税の重要なポイントは借入をすることではなく、相続財産の中身を現金預金から建物に変更することなのです。

ご注意を!



【相続税の現状】

これは財務省のホームページで公表されている相続税の統計データです。

表1 相続税課税状況の推移

 

表1 相続制の課税状況推移

 

(備考)
1.「死亡者数(a)は「人口動態統計」(厚生労働省)により、その他の計数は「国税庁統計年報書」による。
2.「被相続人1人当たりの法定相続人数」は、当初申告ベースの計数である(修正申告を含まない)。
 ただし、昭和64年分には、更正の請求により納付税額がゼロとなった者の計数が含まれている。
3.「課税件数(b)」は、相続税の課税があった被相続人の数である。
4.「納付税額(d)」には納税猶予額を含まない。

 

表2 相続税の合計課税価格階級別の課税状況等(平成19年分)

 

表2 相続税の合計課税価格階級別の課税状況等(平成25年分)

 

(備考)
1.「国税庁統計年報書」による。
2.当初申告ベースの計数である(修正申告を含まない)。