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【名義・登記変更】

遺産分割は亡くなった人が残した財産を相続人に配分する手続きです。

遺言書がある場合は、遺言による指定に基づいて相続を行い、遺言書がない場合は、法定相続人が話し合いを行い、分割の方法を決定します。相続人が遺産を相続しても、いつまでも共有状態にしておくと、財産の管理・利用・処分のうえで障害が生じます。

そこで共有状態を解消して、相続財産ごとに取得者を決めるのが、遺産分割です。
基本的に相続人同士が全員で話し合って、だれがどの財産をもらっていくかを決めることになっています。
この話し合いを遺産分割協議といい、相続人のうち一人でも欠けている場合は無効となります。

遺産名義変更

相続財産の名義変更は、いつまでにしなくてはならないというような期限はありません。
しかし次の相続が起こってしまった場合は手続きが複雑になりトラブルのもとになりますし、相続した財産を誰かに売却しようという場合には名義人が被相続人のままであると売却することができませんので、結果的に名義変更をしなくてはならなくなります。

トラブルを避けるためにも遺産分割協議が終了したらなるべく早めに相続財産の名義を変更するようにしてください。

金融機関は契約者が亡くなったことを知った段階で、口座を封鎖しますので決済することはできなくなります。
決済口座の変更は可能ですので支払通知書の連絡先に電話で連絡してください。

電話で名義変更を申し込みます。

通常は窓口で「加入承継・改称届書」にて申し込みます。
死亡診断書、戸籍謄本、印鑑等が必要となります。
ただし電話会社により手続きが異なる場合がありますので直接問い合わせてください。

未払い金を一括支払して退会手続をします。

陸運局で名義変更の手続きを行います。
手続きに関しては陸運局に直接問い合わせてください。

必要な書類は移転登録申請書、遺産分割協議書、戸籍謄本、除籍謄本、相続人全員の印鑑証明書、委任状(手続を依頼する場合)などです。

被相続人の名義である預貯金は一部の相続人が預金を勝手に引き出すことを防止するために、被相続人の死亡を銀行などの金融機関が確認すると預金の支払いが凍結されます。
凍結された預貯金の払い戻しを受けるための手続きは遺産分割が行われる前か、行われた後かによって手続きが異なります。

1.金融機関所定の払い戻し請求書

2.相続人全員の印鑑証明書

3.被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までのものすべて)

4.各相続人の現在の戸籍謄本

5.被相続人の預金通帳と届出印
1.金融機関所定の払い戻し請求書

2.相続人全員の印鑑証明書

3.被相続人の戸籍謄本(出生から死亡までのものすべて)

4.各相続人の現在の戸籍謄本

5.被相続人の預金通帳と届出印

6.遺産分割協議書(相続人全員が実印で押印)
1.家庭裁判所の調停調書謄本か審判書謄本(家庭裁判所で発行しています)

2.預金を相続した人の戸籍謄本と印鑑証明書

3.被相続人の預金通帳と届出印
1.遺言書(コピー可)

2.被相続人の除籍謄本(最後の本籍の役所で取得)

3.遺言によって財産をもらう人の印鑑証明書

4.被相続人の預金通帳と届出印

※金融機関によっては用意する書類が異なる場合もありますので、直接問い合わせてください。
株式の名義変更は被相続人名義の株式が上場株式か非上場株式かによって手続きが異なります。
上場株式は証券取引所を介して取引が行われていますので証券会社と株式を発行した株式会社の両方で手続をします。
非上場株式は取引市場がないので、それぞれ会社によって行う手続きが変わりますので発行した株式会社に直接問い合わせてください。
証券会社は顧客ごとに、取引口座を開設していますので、取引口座の名義変更手続きを行います。
取引口座を相続する相続人は以下の書類を証券会社に提出して名義変更します。

1.取引口座引き継ぎの念書(証券会社所定の用紙)

2.相続人全員の同意書(証券会社所定の用紙)

3.相続人全員の印鑑証明書

4.被相続人の戸籍謄本

5.相続人の戸籍謄本

一方、株式を発行した株式会社における手続きですが、この手続きに関しては証券会社が代行して手配してくれます。
その際、相続人は相続人全員の同意書(名義書換を代行している信託銀行所定の用紙)が必要となります。

相続登記(遺産登記変更)

相続登記とは、不動産の所有者が亡くなり、相続人に所有権が移転した際に行う不動産の名義変更手続きのことです。
相続登記はいつ行っても構わないのですが、所有権の移転登記を行わないと、固定資産税は被相続人の名義でかかる上、不動産を売却することができません。
相続登記に必要な書類は多いので、事前に確認しておくことが重要です。
なお相続人に再度、相続が発生する場合は特に登記手続きが複雑になりますので注意してください。
登記は、その当事者(登記で利益を受ける人と失う人)が登記所に出頭し申請をする必要があります。
もちろん司法書士などの代理人による申請もできますが、郵送による申請は認められません。 

※平成17年の新不動産登記法により、書面申請について郵送による申請が受け付けられるようなりました。
登記は、登記権利者と登記義務者が共同で申請するのが原則ですが、その例外として、相続による登記は相続人だけの単独申請が認められています。
しかし遺贈による登記については共同申請になります。
遺産分割する前は、法定相続分の割合により遺産を共有しているので、必要があれば、法定相続分どおりの「共同相続の登記」をすることができます。
共同相続人の一人が自分の持分だけを相続登記することは認められません。
遺産分割後に名義を書き換えます。
遺産分割による登記は「共同相続の登記」されているかどうかかにより異なります。
共同相続の登記がされている場合は、「遺産分割による持分移転登記」。
共同相続の登記がされていない場合は「相続による所有権移転登記」となります。

 遺言書による相続登記、遺贈登記など遺言があれば、遺言の内容にしたがって相続・遺贈登記することになります。
相続登記の費用は相続による所有権移転登記の登録免許税と実費になります。
登録免許税は不動産固定資産評価額の1000分の4=0.4%になり、実費に該当するのは戸籍・住民票など相続関係書類の取寄せ費用と司法書士の報酬です。
司法書士の報酬は相続人の数、取寄せる書類の通数、不動産の数など簡易な場合と複雑で手間のかかる場合などで変動します。



【贈与税の計算ルート】

「○○をあげます」「もらいます」という行為は贈与であり、財産をもらった人にかかる税金が贈与税です。
贈与が成立するためには、当事者の意思の合致必要であり、子名義の預金通帳を親が子に内緒で作っただけでは贈与にはなりません。

贈与は親族間において行われることが多く、外部からはその実態が把握しにくいものです。
したがって、贈与の事実を明確にするために次のような工夫が有効です。
たとえば贈与の事実およびその時期を書面にし、通帳振込や不動産登記などで贈与の実行を明確にし、贈与税の申告を行います。

贈与の算出

贈与税は暦年(1月〜12月)を1計算単位とし、1年間に受けた財産の価格の合計額が贈与税額計算のスタートとなります。
申告および納付は贈与を受けた翌年3月15日までに税務署への申告および納付を行います。
贈与税の基礎控除は110万円になり、贈与税率は速算表に基づいて計算します。

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相続時精算課税制度

2003年に創設された新しい贈与税の仕組みです。
65歳以上の親から20歳以上の子への贈与については、生涯を通じて2,500万円まで非課税となりました。
従来からの暦年課税制度と選択して適用することとなります。
メリット、デメリットがありますが上手に利用すれば節税効果が期待できます。
相続時精算課税制度の適用を受けようとする受贈者は、1回目の贈与を受けた年の翌年3月15日までに「相続時精算課税選択届出書」を贈与税の申告書に添付して、税務署に提出しなければなりません。
その後もこの制度を選択した親子間で贈与があった場合には、その年ごとに贈与税の申告が必要になります。
1.比較的大きな財産を、少ない贈与税額で子に移転することができます。

2.将来、値上がりそうな財産(土地や株など)について、安い価格の時点を選んで子どもに移転することができます。
 これは、相続税の計算をする際に合算される財産価格の基礎が、贈与時の価格となることによるものです。

3.継続的に収益を生む財産(賃貸用アパートなど)を子どもに移転することにより、贈与後の収益を子どもに帰属させることができます。
1.一度この制度を選択したら、取り消しすることはできません。
 従来の贈与税に戻すことはできず、少額の贈与でも申告しなければなりません。

2.贈与した財産が値下がりした場合においても、贈与時の高い価格を基礎として相続税が計算されます。

3.不動産の贈与について「小規模宅地等の減額特例」が適用できません。



【相続用語集】

相続用語には普段聞きなれない専門用語が多く使われています。
聞きなれない言葉だけにその意味もわからないことが多いかと思います。
そんな専門用語をまとめ『相続用語集』を制作しましたのでお知りになりたい用語と意味はこちらでご確認下さい。

あ行

【遺産分割】
被相続人が残した財産を、相続人に配分する手続きのことです。
遺産を分割する方法は遺言による指定、相続人全員による遺産分割協議、協議で話し合いがつかない場合は家庭裁判所による調停・審判となります。
遺産分割は、相続や遺贈によって得た財産から債務・葬式費用を差し引いてから個々の相続人の相続割合を計算します。

【遺贈】
遺言で財産を特定の者に与えることです。
特定遺贈と包括遺贈がありますが、通常は財産を誰に遺贈するかが明確な特定遺贈が一般的です。
包括遺贈とは全財産を割合によって遺贈する方法で、相続人でない人に相続人と同様の権利義務を与える方法をいいます。
なお特定遺贈により財産を取得した人が法定相続人である場合とない場合では、相続税の負担に違いがあるので注意してください。

【遺族基礎年金】
国民年金加入中の人や国民年金の保険料を払い終わった60歳以上65歳未満の国内に住んでいる人が亡くなった場合に18歳未満の子をもつ妻や両親のいない18歳未満の子などに支給される年金のことです。

【遺族共済年金】
共済年金保険に加入中の人や共済年金の加入をやめたあと共済年金加入中に初診日があるケガや病気が原因で初診日から5年以内に亡くなった時などに支給される年金のことです。

【遺族厚生年金】
厚生年金保険に加入中の人や厚生年金の加入をやめたあと厚生年金加入中に初診日があるケガや病気が原因で初診日から5年以内に亡くなった時などに支給される年金のことです。

【遺留分減殺請求】
相続財産から贈与や遺贈を差し引いた時に、遺留分の額に達しない場合、遺留分権利者やその承継人が遺留分を保全するために、贈与や遺贈の履行を拒絶することです(給付済み財産については返還請求)。

か行

【寡婦年金】
国民年金加入中の人が亡くなった場合に遺族基礎年金の支給条件に合わない妻に対し夫が生きていればもらえたはずの老齢基礎年金の4分の3に相当する額として支給される年金のことです。

【居住用財産の譲渡】
2004年から土地建物についての損益通算・繰越控除が廃止となりましたが、居住用不動産については特例が設けられています。
特例としては3,000万円特別控除、長期譲渡所得の課税特例、損失の繰越控除、買換え等の譲渡損失繰越控除などです。

【公証人】
30年以上の実務経験を有する法律実務家の中から、法務大臣が任命する公務員のことです。
公証役場一覧表記載の公証役場で執務しており、公正証書の作成、定款や私署証書(私文書)の認証、事実実験、確定日付の付与などを行います。

【公正証書】
公証人が公証人法・民法などの法律に従って作成する公文書です。

【更正の請求(国税通則法)】
申告によって確定した課税標準または税額を、納税義務者が自己に有利に変更するように税務署に求める手続きのことです。
税額などを変更するという点では修正申告と同じですが、修正申告が自主申告によって変更するのとは異なり、税務署の更正権限の行使によって変更されます。
更正の請求は、所定の事項を記載した更正請求書を税務署に提出して行います。

さ行

【債務控除】
相続税の計算の際に、取得財産から引く債務・葬式費用のことです。

【事業承継】
被相続人が事業を行っていた場合、その事業を後継者に引き継ぐことをいいます。

【死亡一時金】
国民年金を3年以上納めている加入者が、老齢基礎年金や障害基礎年金をもらわずに亡くなり、遺族基礎年金の支給の対象となる遺族がいないときに支給される給付金のことです。
国民年金の保険料を納めた期間で支給額が決まります。

【借地権】
建物の所有を目的とする地上権または土地の貸借権のことです。
地上権は土地を専用に使用する権利のことで、主に居住が目的であれば、建設、登記、売買することもできます。
賃借権は地主に賃料を払い土地を借りる権利で賃借権を譲渡、転貸するには地主の承諾が必要です。

【住宅取得資金の贈与税特例】
住宅取得資金を親などから子などに贈与した場合の贈与税の特例として、暦年課税の特例(5分5乗方式)がありましたが、2006年度の法改正で暦年課税の特例が廃止され、2006年1月1日以降は相続時精算課税の特例のみとなっています。

【小規模宅地等の特例】
被相続人が居住用・事業用に使っていた宅地で一定の要件を満たせば、居住用で最大330平米まで80%減額、事業用で最大400平米まで80%減額になる制度です。

【成年後見制度】
認知症、知的障害などの理由で判断能力が不十分になると不動産や預貯金などの財産を管理したり、遺産分割の協議をしたりする必要があっても、自分で処理することが難しい場合があります。その時のために財産管理や医療契約、施設への入所などの身上に関する事柄を自分に代わって仕事してくれる人(任意後見人)を定めて支援してもらう制度です。

【葬祭費(埋葬料)】
葬儀を行った人が健康保険から費用の補助として受け取れる給付金のことです。申告制で、期限は国民健康保険、社会健康保険ともに加入者が亡くなった日から2年以内になっています。

【相続分皆無証明書】
被相続人から生前贈与などを受けた相続人が「自分が譲り受ける財産はもうない」ということを証明する書類のことです。
特別受益証明書、相続分なきことの証明書とも呼ばれています。
しかしこの方法は遺産分割協議手続や相続放棄手続の脱法手段として濫用される危険性があり、紛争のもとになりやすいとの批判があります。

【相続財産法人】
被相続人の死後、相続人がいない場合、民法の規定で法人格が与えられる財産のことです。
利害関係人や検察官の申し立てにより家庭裁判所が選任した相続財産管理人が管理します。

【相続登記】
不動産の所有者が死亡すると、相続人に所有権が移転するためひつような不動産の名義変更手続きのことです。
相続登記を行わないと、固定資産税は被相続人の名義でかかる上、不動産を売ることはできません。

た行

【特定事業用資産の特例】
要件を満たす自社株や特定の立木等について一定の負担軽減がある制度のことです。

な行

【認知】
嫡出でない子について、その父または母が血縁上の親子関係の存在を認める旨の観念の表示を認知といいます。
父親が認知しなければ非嫡出子は相続人になれません。
認知には父が父の意思で自分の子として認める任意認知と裁判により認知を求める強制認知の2種類があります。

は行

現在ありません。

ま行

現在ありません。

や行

【遺言執行者】
遺言執行者とは、被相続人が残した遺言書の内容を実現させるために、「相続財産の管理・財産分割」などを行う者のことです。
遺言執行に必要な一切の行為をする権利をもち、単独で遺言の執行を行うことができます。

ら行

【連帯納付制度】
相続税・贈与税について自分が納税していても、他の相続人が納税しないと、その分も負担して納税する必要がある制度のことです。
過去に裁判でこの制度の可否が争われていますが国側勝訴の判例が出ており、現在でも税金を払うことになっています。
また日本税理士会連合会と日本弁護士連合会が共同して廃止を求める意見を表明するなど問題になっています。

わ行

現在ありません。



【相続方法】

相続人は、相続を承認するか放棄するかを選ぶことができますが承認するか破棄するか考える期間は相続開始を知った時から3か月とされています。
相続を承認するか放棄するかは遺産の概要等を判断しよく考えて判断してください。

相続方法の種類

相続には承認か放棄する方法があり、承認にはすべての財産を引き継ぐ「単純承認」と整理してマイナスになった場合は財産を引き継がない「限定承認」の二種類があります。
なお相続を放棄した場合は、詐欺や脅迫などの特別な理由がない限り、放棄を撤回することはできないので注意してください。

単純承認

相続される人の一切の財産を無制限に引き継ぐ方法で最も一般的な相続方法です。
この場合はとくに手続を行う必要はありません。相続開始後3ヶ月以内に他の手続をとらなかった場合に自動的に単純承認をしたものとみなされるためです。注意としては借金が遺産より多い場合には自分の財産から返済する必要があることです。
なお単純承認の意思が無くても、次のような事実があった場合には単純承認をしたものとみなされる可能性があります。

1. 遺産の全部または一部を処分したとき

2. 3ヶ月の期間内に限定承認も相続放棄もしなかったとき

3. 遺産の全部または一部を隠したり、債権者に隠れて消費したり、遺産を隠すつもりで限定承認の財産目録に記載しなかったとき。

限定承認

相続される人の一切の財産を無制限に引き継ぐ方法で最も一般的な相続方法です。
この場合はとくに手続を行う必要はありません。相続開始後3ヶ月以内に他の手続をとらなかった場合に自動的に単純承認をしたものとみなされるためです。
注意としては借金が遺産より多い場合には自分の財産から返済する必要があることです。
なお単純承認の意思が無くても、次のような事実があった場合には単純承認をしたものとみなされる可能性があります。

1. 遺産の全部または一部を処分したとき

2. 3ヶ月の期間内に限定承認も相続放棄もしなかったとき

3. 遺産の全部または一部を隠したり、債権者に隠れて消費したり、遺産を隠すつもりで限定承認の財産目録に記載しなかったとき。

限定承認

財産と債務を整理して、余りが出たらその分だけ相続、余りが出なければ相続はしないという条件で相続を承認する方法です。
つまり遺産を清算した結果、借金だけしか残らないような場合は不足分を支払う必要はなく、逆に借金を支払っても余りが出た場合はその財産を受け継ぐことができます。
遺産がプラスになるかマイナスになるか分からないようなときに有効といえます。

ただ限定承認は、相続放棄者を除く他の相続人全員がそろって行わなければならず、相続人の中で一人でも単純承認をした人がいる場合は限定承認を選択することができません。

限定承認の手続は、相続開始を知った時より3ヶ月以内に家庭裁判所に限定承認申述書を提出して行います。限定承認手続では、相続財産管理人の選任や財産目録の作成、公告手続や債権者への返済など複雑な手続を行わなければなりません。
申し立てをする際は、事前に弁護士や司法書士などの専門家に相談した方がいいでしょう。

相続放棄

被相続人の財産の全てを放棄し、一切の財産を相続しない方法です。
亡くなった人の遺産より借金の方が明らかに多い場合にはこの方法を選択した方が賢明です。
相続を放棄するには、相続開始を知ったときより3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄申請書を提出しなければなりません。
この申請が家庭裁判所で正式に受理されると相続放棄の効力が発生します。

相続放棄の効力が発生すると、相続放棄の申請をした相続人は最初から相続人ではなかったことになり、相続放棄者の子や孫には代襲相続は行われず、残った相続人で財産を分割することになります。
相続放棄に必要な書類は以下のようになります。

1.相続放棄の申述書1通

2.申述人の戸籍謄本1通

3.被相続人の除籍(戸籍)謄本、住民票の除票各1通

事案によって、ほかにも資料が必要になることがありますので、申述する家庭裁判所に確認したうえで提出に行ってください。
相続放棄の手続きが完了したら、相続放棄受理証明書の交付を受けます。
債務者へ対抗する時や名義変更の時に必要となるので保管しておきます。

※第1順位の相続人が相続を放棄した場合、第2順位または第3順位の相続人が代わって相続人となります。

代襲相続

相続するはずの人が既に死亡している場合、子どもが変わって相続することを代襲相続と呼びます。
被代襲者は、被相続人の子どもと兄弟姉妹です。直系尊属・配偶者には代襲相続はありません。
代襲相続は相続欠格や相続廃除で相続人が相続権を失った場合にも適用されます。
相続放棄は代襲原因になりません。

生命保険金は一般的に被保険者の法定相続人が受取人になっています。
また被保険者に借金がある場合、相続人は相続放棄をする場合があります。
この場合、相続放棄をした相続人は生命保険金も受け取れないと思う方がいますが勘違いです。

生命保険金は民法上、被保険者の財産ではなく受取人の財産とみなされる為、保険金を受け取ることができます。
しかし税制上はみなし相続財産とする決まりがあるので、相続税の対象になります。
なお、相続人でない者(相続放棄した者も同様)が取得した生命保険金は非課税とはなりませんので注意してください。



【相続対策入門】

一般的な相続対策として、遺産分割対策、納税資金対策、節税対策が挙げられます。

遺産分割対策は、相続税の申告義務があるなしにかかわらず、すべての人が考えておかなければいけない対策です。
一方、納税対策・節税対策は、主に相続税の納税を視野に入れた対策です。

相続人のうちの誰にどの財産を承継させるか、相続人の間で争いが起きないか、検討をしておく必要があります。

遺産分割対策

遺産分割を滞りなく行う為にも遺産分割対策を考える必要があります。
申告期限までに遺産分割が決まらない場合、相続税にある負担軽減制度(配偶者控除、特定事業用資産の特例など)が適用されず納税の負担が増すことになるからです。
揉めない為にも現状の財産を分割しやすい財産に組み換え、相続人に受け継ぎやすくしておくことをお勧めします。

一番有効なのは遺言書を作成することです。
遺言が無いばかりに残された相続人の間に深刻な争いが生じたりすることがよく聞きます。

極端な話、遺言書があれば遺産分割のほとんどが解決されるといっても過言ではありません。
遺言は法定相続人の権利よりも優先され(遺留分を侵害している場合は減殺請求されることはあります)遺言書があれば分け方については解決近しといえます。

相続対策

節税の考え方としては贈与により所有財産の移転を行うことや課税価格を引き下げる対策、優遇制度を活用することが考えられます。

【計画的・長期的贈与】
年110万円の基礎控除(暦年贈与)を活用した贈与は、長期的・計画的に行えば確実な節税対策になります。

【配偶者控除】
配偶者には「贈与税の配偶者控除の特例制度」があります。
例えば、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭を配偶者間で贈与する場合は2,000万円(基礎控除と併せて2,110万円)までは贈与税がかかりません。
ただし婚姻期間が20年以上という条件や申告が必要などの要件があります。

【賃貸用不動産】
自分が使用もしくは未使用の不動産を100とすると、賃貸用不動産は70程度の評価となります。未使用の不動産を賃貸用とすることで課税価格を引き下げることができます。

【養子縁組】
相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)や生命保険金等の非課税枠(500万円×法定相続人の数)を上げることで課税遺産総額を下げることができます。

【生命保険】
生命保険金は500万円×法定相続人の数までは非課税なので、この非課税枠を活用できるだけの生命保険に加入します。

【死亡退職金】
死亡退職金は500万円×法定相続人の数までは非課税なので、その範囲内であれば相続税はかかりません。

納税対策

節税ばかりに目がいきがちですが、相続税を支払う財源対策も必要です。
節税ばかり考えていても相続税を納付する資金がないのでは意味がありません。
主な対策としては以下のことがあげられます。

【金融資産計画的贈与】
アパートなどの収益を生む財産を子供に贈与することにより、贈与後の家賃収入を子どもに移転します。家賃収入により増えていく金融資産を将来にわたって抑えることができ、子どもは納税資金を準備できるのです。

【生命保険】
被相続人が生命保険に加入し受取人を相続人にしておけば、被相続人が亡くなった後に相続人に死亡保険金が入ってきますので、納税資金に役立てることができます。

【物納】
2006年の法改正により大幅な制限が設けられたため、物納は非常に使いにくい制度になりました。
しかし相続財産のほとんどが不動産の場合は、生前から物納条件を満たす準備さえしておけばメリットがあります。



【相続税の計算ルール】

相続遺産を評価し、相続人との分割協議が終われば、次は相続税の課税価格を算出しなければなりません。
ここで、相続税の課税価格の算出をどのように行えばよいのかを確認します。

相続税の計算は、相続をした相続人や遺言によって財産を得た受遺者の全員について、それぞれ別々に行わなければなりません。

まず課税対象となる価格の計算をしなければなりません。初めて経験する人にとっては難しいものですが、お金の問題なので専門家に任せずに行うようにしてください。

課税価額の算出

課税価格とは相続税がかかる金額のことです。取得する財産を足していき、そこから非課税財産分、債務分を引いていきます。

【相続または遺贈により取得した財産の価額】
国税庁が定めた評価方法により、時価ではなく相続税評価額を算出します。

【みなし相続財産】
みなし相続財産としては以下のものがあります。

1.受取人が受け取る保険金額から500万円×法定相続人数の非課税額を控除した額。

2.在職中に亡くなった場合、受取金額に500万円×法定相続人数の非課税額を引いた額。

3.生命保険会社や郵便局などの個人年金で、年金や一時金が遺族に支払われる額。

4.被相続人に尽くした特別縁故者へ認められる財産分与。

5.遺言による信託受益権や定額譲り受け、債務免除や肩代わりを受けた額。

【3年以内の生前贈与】
被相続人から死亡3年以内に贈与された財産になります。

【債務・葬式費用】
借金やローンなど被相続人が残したマイナス分の財産と葬式にかかる費用の葬儀料、戒名料、通夜費用などの諸経費。

【非課税財産】
墓石、仏壇、香典、花輪代、弔慰金、公益事業財産などの非課税財産。
以上の項目を以下の式で計算します。

課税価額=相続財産価額+みなし相続財産額+生前贈与額−債務・葬式費用

相続税の算出

課税価額の合計額を計算したあと、基礎控除額を引き、課税遺産の総額を計算します。そして財産を法定相続分どおりに分割して相続したと仮定し相続税の総額を計算します。

【課税価格の合計】
先ほど計算した課税対象額の各人の価格を全て合計します。

【基礎控除額】
3,000万円+600万円に法定相続人をかけた金額です。

【各取得金額】
遺産を法定相続分どおりに分割したと仮定し、それぞれの法定相続人の取得金額を計算します。

【算出税額】
法定相続分に応ずる各取得金額に税率をかけて法定相続人ごとの税額を求めます。
ここでの計算は、法定相続分に応じる各人の取得金額×速算税率−速算控除額となります。

速算税率は以下の通りです。

控除できるもの

相続税の計算をするには遺産の総額を確定しなければいけませんが、この際にいろいろな控除があります。
以下に挙げる控除はその都度改正される可能性がありますが、ここでは現行の制度をもとに説明します。

【配偶者控除】
妻や夫が相続する場合、法定相続分相当額と1億6000万円のいずれか大きい額までは相続税は免除されます。
1億6000万円を超えている場合は、軽減額を配偶者の税額から差し引きます。 その計算方法とは、
「相続税の総額」×「配偶者が法定相続分を取得した場合の金額(もしくは配偶者が実際に取得した課税価格)÷相続税の課税価格の総額」
となります。

【贈与税控除】
納付済みの贈与税額を相続税額から差し引いて、税額を調整します。算出方法は、
「贈与を受けた年分の贈与税額」×「相続税の課税価格に加算された贈与財産の価額÷贈与を受けた年分の贈与財産の合計額」
となります。

【未成年者控除】
法定相続人が未成年の場合、10万円に20歳になるまでの年数を掛けた額が税額から控除されます。
例えば、子供が10歳であれば、20歳−10歳=10歳なので10×10万円で100万円が税額から控除されます。
控除額がその未成年者の相続税額を越えてしまうときには、超過分を親や兄弟姉妹など、未成年者の扶養義務者である人の相続税額から差し引くことができます。

【障害者控除】
相続人が障害者である場合、85歳に達するまでの1年につき10万円(特別障害者は20万円)の金額が税金から控除されます。
障害者控除の場合も、控除額がその障害者の相続税額を越えてしまうときには、超過分は扶養義務者であるほかの相続人の相続税額から差し引くことができます。

【相次相続控除】
短期間のうちに相次いで相続が続くと、相続税を支払う人にとって負担になるので、相続税額から一定金額を差し引くことができます。
10年以内に2回以上相続があった場合、最初の相続税の一部を2回目の相続の相続税から控除できます。

【外国税額控除】
相続税は海外にある財産に関しても取得されますが、その取得した財産に関して、日本の相続税にあたる税金を外国で課税されていた場合、日本と外国で二重に課税されてしまうことになります。
その際に、一定額を外国税額控除として差し引くことができます。

申告に必要な書類

相続税の算出が終わりましたら申告を行います。
申告および納期限は、相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。申告書の提出先は、被相続人の住所地にある税務署で、相続税は一括して納付するのが原則となっています。

もし、期限内に納めることができなかった場合には、延滞税を払わなければなりません。
延滞税は納期限から2ヶ月以内なら「年7.3%」と「特例基準割合+1%」のいずれか低い割合となっています。
なお納期限から2ヶ月を超えてしまった場合には年14.6%となっています。
ただし、平成26年1月1日以後の期間は、年「14.6%」と「特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合となります。

【必要書類】
相続税の申告には多くの書類を添付しなければなりません。いろいろ複雑ですが、申告期限には全て揃えなければならないので注意してください。以下の表が相続税申告に必要とされる主な添付書類です。


【身分関係、権利関係の書類】

1.被相続人の戸籍(除籍、原戸籍)謄本

2.被相続人の経歴書(出生地、学歴、職歴等)

3.相続人全員の戸籍謄本

4.申述の証明書(相続放棄した者がいるか、限定承認の場合)

5.相続人関係図

6.相続人全員の印鑑証明書

7.遺言書の写し(遺言書が存在する場合)

8.遺言書の検認証明書(遺言書が存在する場合)

9.遺産分割協議書の写し(遺産分割協議が成立している場合)

10.特別代理人の選任申立書(相続人に未成年者がいる場合)

11.住民票(特定居住用宅地等の特例を適用する場合、相続開始の日以後に作成された引続き居住する者の住民票が必要)


【財産、債務を明確にする書類】

1.土地、建物の登記簿謄本

2.固定資産税評価証明書(土地について路線価地域の場合は不要)

3.預貯金の残高証明書(可能であれば解約計算書)

4.生命保険金の支払通知書の写し

5.退職手当金の支払通知書の写し

6.借入金の残高証明書

7.入院費用、租税公課等の未払金残高明細書

8.葬式費用の明細書


【評価明細書(税務署に所定の用紙があります)】

1.宅地及び宅地の上に存する権利の評価明細書

2.市街地農地等(市街地周辺農地、山林、原野)の評価明細書

3.上場株式の評価明細書

4.登録銘柄及び店頭管理銘柄の評価明細書

5.国税局長の指定する株式の評価明細書

6.取引相場のない株式の評価明細書

7.山林、立木の評価明細書

8.一般動産及び船舶の評価明細書

9.書画骨とう品の評価明細書

10.特許権、実用新案権、意匠権、商標権等の評価明細書

11.営業権の評価明細書

12.定期金に関する権利の評価明細書

13.信託受益権の評価明細書



【相続人の確認】

相続を進めるには相続に関係する登場人物を明らかにする必要があります。
相続人(法定相続人)を確定するには、被相続人が生まれてから亡くなるまでの連続した戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本を取寄せる必要があります。

請求は本籍地の市町村役場の戸籍担当窓口にて原則戸籍に記載されている人や直系親族などが行います。
代理人が請求することもできますが、本人の委任状が必要になります。

法廷相続人

民法で定められている相続人のことを法定相続人といいます。
法定相続人になる資格があるのは配偶者と血族です。

配偶者とは夫や妻を指し、血族は親戚縁者を指します。しかし血族は全員が法定相続人になれるわけではありません。
配偶者は常に法定相続人になることができるのですが、血族は法定相続人になることのできる順番が決まっているのです(相続順位)。

配偶者以外の血族相続人の順位は以下の通りです。

【血族相続人】
第一順位
配偶者以外の第1位順位は直系である子どもであり、どんな場合でも常に相続人になります。
嫁いだ娘はもちろん、実子であれば先妻の子も後妻の子も相続人になります。
養子や養子にいった実子、認知されている非嫡出子も相続人となります。

なお既に子どもが死亡している場合は孫、孫が死亡している場合はひ孫が死亡した子どもに代わって相続人となります。
孫やひ孫は直接の相続人ではなく、子が死亡している場合に代襲相続人になります。

第二順位
相続人の子どもがいないときに相続権が発生するのが被相続人の父母です。
配偶者がいない時は、全財産を人数で均等割りにします。
配偶者がいる場合は、全財産の3分の2が配偶者の法定相続分、残りの3分の1を均等に相続します。

第三順位
被相続人の子どもおよび父母がいないときには、被相続人の兄弟姉妹に相続権があります。
配偶者がいないときは、全財産を人数で均等割りにします。
配偶者がいる場合には、全財産の4分の3が配偶者の法定相続分です。残りの4分の1を兄弟姉妹が均等に相続します。

法定相続人

【胎児】
既に生まれたものとみなされ相続権がありますが、死産だった場合、相続権は失われます。また胎児の母が胎児の法定代理人として遺産分割協議に参加することはできません。家庭裁判所に特別代理人を選任してもらう必要があります。

【非嫡出子】
婚姻関係のない男女間の子を指します。父親との親子関係は父親が認知して初めて生じますので、認知されていない非嫡出子に相続権は発生しません。また認知されていた場合は非嫡出子の相続分は嫡出子の半分となります。

【養子】
相続において養子は実子と同様に扱われます。また実父母との親子関係が無くなった訳ではないので実父母からも相続できます。
ただし、実父母およびその血族との親族関係を終了させて成立する特別養子の場合は実父母の相続権はありません。

【内縁の配偶者】
内縁の配偶者には相続権はありませんが、例外的に相続できる場合があります。
1つめは被相続人が生前、内縁の妻に自分の財産を譲る遺言を残していた場合。ただし、遺留分を侵害しない範囲内に限られます。
もう1つは、被相続人に身寄りがなく相続人がいない場合、内縁の妻は特別縁故者として相続することが認められます。

【再婚した配偶者の連れ子】
再婚した配偶者は、戸籍上の配偶者でもあるので相続権がありますが、前夫の子は被相続人と親子関係ではないので相続権はありません。相続させる為には養子縁組を行う必要があります。

【離婚した元配偶者】
元配偶者には相続権はありません。しかし、子どもは親子関係が無くなりませんので、嫡出子として相続することになります。

【別居状態の配偶者】
配偶者に相続権があるかは相続開始時の戸籍によって決定されます。正式に離婚が成立するまでは相続権があります。

相続資格を失う場合

法定相続人であっても、相続資格を失う場合があります。
相続欠格事由がある場合又は被相続人から廃除された場合です。

【相続欠格】
法定相続人は順位ごとに遺産を相続する権利を有していますが相続で優位になるために罪を犯したり、被相続人を恐喝などして自分に有利な遺言を書かせたりした場合、欠格事由に該当したとみなされ相続権を失います(相続欠格)。

欠格事由に該当するのは次の場合です。

1.故意に被相続人、先順位の相続人を殺害した者、または殺害しようとし刑に処せられた者

2.被相続人が殺害されたのを知っていながら告発、告訴しなかった者
 (ただし判断能力が無い者や、殺害者が配偶者または直系尊属の場合は除く)

3.詐欺や脅迫により被相続人の遺言を妨害した者

4.遺言書を偽造、破棄、隠匿した者

このような欠格事由に該当する者がいる場合は、他遺族は相続登記や名義変更などの相続手続きするために確定判決の謄本や、その相続人が欠格事由に該当する証明書を用意し、手続きを行います。

相続廃除

欠格事由まではいかないものの、金をせびったり暴力を振るったりする相続人に相続させたくないという事情があり、被相続人の意思で相続人の相続権を奪いたい場合があります。

このような時は、被相続人が家庭裁判所に申請することで相続人の相続権を失わせることができます。
相続廃除ができるのは次の場合です。

1.遺留分を有する相続人が被相続人に対して虐待を加えたり、重大な侮辱をしたりした場合

2.遺留分を有する相続人が著しい非行を犯した時

ただし、この手続きは家庭裁判所へ申請をし、認められることで効力が発生します。
家庭裁判所の調査で被相続人にも非が明らかになれば排除は認められません。たとえ相続人と被相続人で相続排除についての合意があったとしても、家庭裁判所は職権で事実関係を調査することができます。

なお相続人の廃除は遺言でも可能です。
この場合は被相続人に代わって、遺言執行者が家庭裁判所へ申請を出すことになります。
遺言執行者とは、遺言による遺産分割を実行する人のことで、被相続人が遺言で指名するか、相続人の申し立てにより家庭裁判所が選任します。

相続人の不在

相続人がいない状態を相続人の不存在といいます。
「相続人の不存在」の場合は被相続人の債権者、特別縁故者、検察官が家庭裁判所に対し相続財産管理人の選任を請求します。

相続財産管理人は、相続財産を管理するとともに債権申出の公告を行い、債権者や遺贈を受けた者がいれば支払いを行います。また相続人の存在が不明の場合、家庭裁判所は相続人捜査の公告を行います。
それでも相続人が現れない場合は相続人の不存在が確定します。

確定された時点で、相続財産管理人には家庭裁判所の審判により報酬が決定され、相続財産の中から支払われます。
それでも残った財産は国庫に帰属することになります。ただし、その財産が他の者との共有財産あるときには、その持分は他の共有者に帰属します。

なお、相続人捜索の手続のなかで相続人がいることが判明した場合(ただし、その相続人が相続を承認する)には、これらの手続きは直ちに中断され、通常の相続手続きに移行します。
その場合、相続財産管理人がそれまでになした清算行為の効力は失われません。

特別縁故者

相続人ではないが、被相続人と特別の縁故関係にあった者を特別縁故者といいます。
特別縁故者として財産分与の申し立て(相続人捜査の期間満了後3ヶ月以内)を行った者がいれば、家庭裁判所は特別縁故者の種類・縁故の厚さ・職業・財産内容他の事情を考慮し内容を決めます。

内縁の妻や事実上の養子他、被相続人の療養看護に努めた親戚・知人・看護婦など特別に血縁関係になくても問題ありません。
個人だけでなく、法人も特別縁故者として認められています。

相続財産の分与をするためには、家庭裁判所の相続人捜索の公告期間満了後3ヶ月以内に申し立てを行います。



【相続を行う】

相続の手続きはお金にまつわることなので、後々になって損をしないように慎重に進めるのがよいです。
その際に相続の大まかなスケジュールを頭に入れておくと、滞りなく手続きを進めていくことができます。

相続の一般的な流れ

01.死亡届の提出
死亡診断書を添付した死亡届を被相続人の死亡地の役所に提出します。

02.遺言書の確認
遺言書の有無を確認します。後で出てくると問題になるので十分に調査します。

03.相続人の確認
遺言により指定されていない限り法律によって相続人とその順位が定められています。

04.遺産評価
相続する財産がどのくらいかを把握、リストアップして財産目録を作成します。

05.相続方法
遺産を相続するか放棄するかを選択します。

06.準確定申告
相続人の代表者は、1月1日から死亡日までの所得税の確定申告を行います。

07.遺産分割協議
遺言がない場合は、相続人全員での話合いで遺産の配分を決めます。遺産分割について合意したら遺産分割協議書を作成します。

08.名義・登記変更
相続によって取得した財産の名義や登記を変更します。

09.相続税計算・申告
被相続人の死亡時の住所地の税務署に申告・納税します。

以上、簡単に相続の流れを見ましたが、相続は本来であれば故人をしのぶべき時期に行わなければならないので慌ただしいものになってしまいがちです。ですので、予めどのように行うかを知っておく、考えておくことも大切なことです。
より詳しい相続の流れについては、こちらからご確認ください。



【相続と相続税】

相続とは亡くなった人の財産(遺産)を一定の家族が引き継ぐことを指します。
自分の親や親族が亡くなった場合、葬儀や行政手続など色々やることがありますが、同じように親が残した財産を相続する作業も行う必要があります。

相続は被相続人が死亡した瞬間から自動的に開始されます。
相続人が被相続人の死亡の事実を知らなくても、被相続人の死亡によって相続は開始され、財産に属する一切の権利義務は相続人に移ります。

遺産の相続はその査定や課税方法が複雑であり、なかなか素人では理解できにくいものになっています。基礎的な知識を持っていないと大きな損をしてしまう可能性があります。

相続税

相続税とは親族などが亡くなったことにより、財産を譲り受けた者に対してかけられる国税のことです。

死亡した人を被相続人とよび、相続によって財産を承継した人を相続人とよびます。
被相続人の財産を相続した相続人が相続税を負担することになります。ただし、全ての相続財産から相続税基礎控除や各種の控除を行い、余った財産が相続税課税総額になりますので基本的に普通の人には発生しません。

比率から言うと国内の相続人の内20人に1人が納付する場合に相続税がかかるといった程度です。
また、遺言によって財産を譲り受けることを遺贈とよび、この場合も相続税がかけられます。

遺贈により財産を与える人を遺贈者とよび、財産を譲り受ける人を受贈者とよびます。
遺贈は遺言書に基づいての財産の譲渡であり、相続による財産の取得よりも優先されます。

【相続税基礎控除】
相続税の基礎控除額は以下の算定式で計算されます。
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人)

このことから大抵の人は基礎控除額が課税総額を上回ると思います。

例えば課税される遺産総額が3,600万円、相続人が配偶者のみという場合、課税総額3,600万円−基礎控除3,600万円=0円となり相続税は発生しません。

遺産

遺産には有形無形の様々なものがあり、被相続人の財産に属した一切の権利および義務を受け継ぎます。

以下にある表が遺産分割の対象となる財産・ならない財産をまとめたものになります。

分割の対象となるプラス財産
土地、家屋、借地権、借家権、現金、預貯金、有価証券、債券、金銭債権、家財、自動車、貴金属、書画骨董、美術品、収集品、ゴルフ会員権、特許権、著作権など
分割の対象となるマイナス財産
借金、売掛金、借入金、住宅ローン、未払いの月賦、未払いの税金、未払いの家賃、地代、葬式費用、未払いの医療費など
分割の対象とならない財産
一身専属的な権利や義務、墓地、墓石、仏壇、祭具、系譜、死亡退職金、遺族年金など



【税務調査】

税務調査とは、納税者が申告した内容が正しいものか、申告漏れなどがないかをチェックするために行われるものです。

日本の納税制度は自己申告が原則となっており、自分が納める税金について、税法に基づいて自分で財産額と税額を計算し、自分で申告することが義務付けられています。
しかし、すべての納税者が正確な申告を行っているとは限りません。

そこで、申告納税制度の公正な適用を維持する上で、納税者が申告した内容が正しいかどうかを確認することが必要となります。
そのために行われるのが税務調査なのです。

税務調査の実態

相続税の申告書を提出すると、半年から2年以内に税務調査が行われることが多いようです。

毎年、申告書の提出は4万5000件ほどありますが、このうち1万3000件程度に税務調査が入ります。
調査割合は約30%ということで法人税4%、所得税1%の調査率とは大きく異なっています。相続税の申告をした方は、かなりの高確率で税務調査が入るということを頭にいれておくべきです。

調査内容ですが、所得税や法人税の税務調査と異なり「取りあえず確認のために調査を行う」というレベルではありません。
その証拠に相続税の調査が行われた場合に約9割の確率で申告漏れが発見されています。
具体的には子供や孫の名前だけを借りた「名義預金」といわれるものがあります。

事前の銀行調査や郵便局調査により遺産の申告漏れを発見してから税務調査に来るため、このような高確率での修正申告につながるのです。



【準確定申告】


所得税は毎年1月1日から12月31日までに生じた所得に対する税額を算出し、翌年に申告と納税をすることになっています。

しかし、年の中途で被相続人が亡くなった場合は、法定相続人が1月1日から死亡した日までの所得を計算し、相続開始日の翌日から4か月以内に申告と納税をしなければなりません。これを準確定申告といいます。

法定相続人が確定していない場合は、相続人の中から代表者を決めて申告を行います。
なお支払った被相続人の所得税額は、相続財産から債務として控除されます。

申告方法

準確定申告では故人が死亡した年の1月1日から死亡日までの所得税について確定申告を行います。
故人が前年分の確定申告をしないまま死亡した時は、前年の確定申告も行う必要もあります。

自営業者で青色申告の場合は必ず確定申告が必要で、白色申告でも所得が基礎控除額を越えている場合は、必ず確定申告をおこなわなければなりません。

故人がサラリーマン(勤労所得者)の場合は、年収が1,500万円以上の時、雑所得が20万円以上の時、退職金が高額などの場合に必要となります。

申告方法ですが準確定申告書に、各相続人の氏名、住所、被相続人との続柄などを記入した準確定申告書の付表を添付して居住地もしくは事業所の所轄の税務署で死亡日から4カ月以内に申告を済ませます(前年分の確定申告は3月15日まで)。
なお故人が勤務する事業所(会社)で給与から源泉徴収している場合は、事業所でおこなってもらえる場合が多いので、勤務先に相談してみてください。

申告条件

下記の条件にひとつでも当てはまれば準確定申告をしなければいけません。

1.2ヵ所以上から給与を受けていた場合。

2.退職金などで給与収入が2000万円を超えていた場合。

3.給与所得や退職所得以外の所得が合計で20万円以上の場合。

4.医療費控除の対象となる高額の医療費を支払っていた場合。

5.同族会社の役員や親戚などで、給与の他に貸付金の利子、家賃などを受け取っていた場合。

申告の注意点

相続人が2人以上いる場合には、各相続人が連署により準確定申告書を提出することになります。

他の相続人の氏名を付記して各人が別々に提出することもできますが、この場合、他の相続人に申告した内容を通知する必要があります。
なお医療費や社会保険料、生命保険料、損害(地震)保険料控除の対象となるのは、死亡の日までに支払った額です。

死亡した時に入院していて、その入院費を死亡後に支払っても含めることはできません。同様に配偶者控除や扶養控除等の適用の有無に関する判定は、死亡の日の現況により行います。



【死亡届けの提出】


死亡届は医師の死亡診断書とともに7日以内(国外の場合は亡くなった事実を知った日から3ヶ月以内)に役所に提出します。
届出は365日24時間受け付けており、死亡者の本籍地または届出人の所在地、死亡地で行います。

葬儀社などへ代行を依頼しない場合は「亡くなった方の氏名」「病院名」「移送先(自宅・斎場)」「電話番号」「連絡者の氏名」「続柄」を伝える必要があります。なお死亡診断書は本籍地と現住所が異なる場合は2通必要なことがあります。

自然死・事故死について

病死の場合は医師が作成する死亡診断書、事故死の場合は死体検案書に基づき死亡日時が戸籍簿に記載されます。
地震や水害、火災など天変地異に遭遇し死亡した場合は、調査を行った所轄署により死亡認定されます(認定死亡)。

行方不明・失踪について

行方不明者の生死が7年以上不明の場合(普通失踪)、または戦争、船の沈没、震災のような災難・危難が去ってから生死が1年以上不明の場合(特別失踪)は、利害関係人が家庭裁判所に申し立てます。

審判が確定した場合、普通失踪は7年の期間満了時、特別失踪は危難終了時に死亡されたものとみなされ、失踪者について相続が開始されます(失踪宣告)。
婚姻は解消され、死亡保険金の受取り等、死亡した場合と同じ取り扱いを受けることになります。しかし、後に失踪者の生存が判明、もしくは失踪宣告によって死亡とされた時と異なる時点に死亡したことが証明された場合は、本人や利害関係者からの失踪宣告取り消しの申し立てで失踪宣告は取り消すことができます。

失踪宣告が取り消された場合、相続は無かったことになります。
ただ宣告が取り消された場合でも、失踪者が生きていたことを知らず相続財産の処分などを行っていても有効と判断され、失踪者へは残っている限度で返還することになります。



【遺産分割協議】


遺産分割は亡くなった人が残した財産を相続人に配分する手続きです。
遺言書がある場合は、遺言による指定に基づいて相続を行い、遺言書がない場合は、法定相続人が話し合いを行い、分割の方法を決定します。相続人が遺産を相続しても、いつまでも共有状態にしておくと、財産の管理・利用・処分のうえで障害が生じます。

そこで共有状態を解消して、相続財産ごとに取得者を決めるのが、遺産分割です。
基本的に相続人同士が全員で話し合って、だれがどの財産をもらっていくかを決めることになっています。

この話し合いを遺産分割協議といい、相続人のうち一人でも欠けている場合は無効となります。

遺産分割の前に

生前の被相続人との関係を考慮し平等を図る制度として「特別寄与者の寄与分」と「特別受益」の規定があります。
相続人の中に被相続人から生前贈与や遺贈を受けた者(特別受益)、または相続人の中に被相続人の財産の増加・維持に特別寄与した者(寄与分)に、法定相続分(又は指定相続分)を加算減算する必要があります。
被相続人から遺言を受けたものがいる場合、被相続人の生前に結婚や養子縁組あるいは生計の資本として生前贈与を受けたものがいる場合は、遺産を法定相続分通りに分割したのでは不公平が生じてしまいます。

そこでこれらの遺贈や生前贈与も遺産とみなし、遺産の総額にその額を加えて遺贈や生前贈与などを受けた相続人がその分を相続したものとして遺産分割します。該当する遺贈や生前贈与を特別受益といいます。

特別受益に該当する生前贈与、遺贈されたものの価値は相続開始時の価値となります。
生前贈与時に5,000万円だった土地が相続開始時に1億円になっていたら、1億円の生前贈与として計算します。金銭についても貨幣価値の変動を考慮するとされています。

※生計の資本とは学費や生活費、事業援助金などを指します。
被相続人の介護などで特別の貢献をした人がいる場合、その分を法定相続分に上乗せする寄与分という制度があります。
寄与として認められるのは、被相続人の事業に労務・財務を提供、または被相続人の療養看護などの行為、かつ被相続人の財産の維持又は増加がもたらされたことが要件になります。

養看護ということでは、通常期待されるような看護では認められず、相続人が被相続人を看護することにより、看護費用の出費を抑えるなどして、被相続人の財産の維持に貢献したというようなことが必要です。
例えば、認知症の被相続人を付きっきりで看護することにより、介護費用として支払わなくてはならない金銭の支払いをしなくて済んだというようなことが必要です。

寄与分がある場合の遺産分割の方法は、遺産の総額から寄与分として認められる金額を引き、残りをみなし相続財産として法定相続分で遺産分割します。
寄与分が認められている相続人は寄与分と遺産分割で確定した遺産を相続することになります。

分割方法の種類

遺産は共同相続人の共同所有となりますが、そのままでは各相続人の所有財産とはなりません。
遺産が現金、銀行預金、株式などの可分物(分割可能なもの)であれば相続人の相続分に応じて分割することができますが、そのようなことはまれで、遺産は土地であったり、家であったり、自動車であったり時計であったりと千差万別で、相続分の数字どおりに都合よく分かれるようになっていません。

そのため以下の分割方法があります。
現物分割は物ごとに遺産をわける方法です。
例えば、「預貯金は相続人Aに、土地と家は相続人Bに、株式は相続人B」といった方法です。
ややこしい分割手続きが簡素化できるという利点があります。
資産のほとんどが不動産であるなど、個々の財産の価値に極端な差がある場合には、現物分割では、うまく割りふることができないので、資産の全部または一部を売却し、その代金を各相続人の相続分に応じて配分する方法です。
事業用資産や農地など、遺産の大部分を事業後継者など特定の人間に受け継がせることが必要な家では、遺産が細分化されては困ります。
そのような場合には、代償分割という分割方法をとります。この方法は、ほかの相続人より遺産を多く取得した人が、自分が所有する財産や金銭などを、ほかの相続人に与えることで相続分を調整する方法です。

遺産分割のやり直し

遺産分割協議は相続人全員の合意により成立します。成立すれば効力が生じ、無効や取り消しの原因がない限り、原則としてやり直しすることはできません。
また、遺産分割協議での約束事を履行しない場合でも遺産分割協議を解除してやり直しを求めることはできないとされており、この場合には調停や訴訟をおこさなければなりません。ただし、財産を相続人が故意に隠していたりした場合、遺産分割協議の無効を主張することができます。
また遺産があとになって新たに出てきたという場合は、その遺産について新たに協議をすることになります。



【遺産評価】


遺産相続の協議を開始する際にまず始めにやらなければならないのは遺産の総点検です。この遺産の評価が明らかにならないと、分割や相続税額算出の話ができません。預貯金、株式など通帳や取引明細書などをくまなく調べてください。
また、遺産は単純なお金のものばかりではなく、様々な形態のものがあります。各遺産の評価の方法を確認してみます。

遺産評価の方法

【土地】
遺産相続の中でも土地の相続は評価の難しいものの一つです。
土地の評価方法は「路線価方式」と「倍率方式」という二つの方法があります。
路線価とは、土地を評価するために国税庁が道路につけている価格のことで、路線価方式とは、毎年更新されるこの路線価に土地の面積を掛けて計算する方法です。対象となる土地の形や土地が面している道路などの条件によって補正を加えて評価額を計算します。

例えば、路線価500万円の道路に面している土地が80平米メートルあったとすると、 500万円×80平米で4億円が土地の評価額となります。
路線価が設定されていない土地は倍率方式で評価します。

倍率方式では固定資産税評価額に国税庁が決めた、その地域の宅地や山林などの評価倍率を掛けて相続税の評価額を計算します。
固定資産税評価額が3,000万円で評価倍率が1.2ならその土地の評価額は3,600万円となります。路線価や評価倍率は国税庁のウェブサイト(http://www.rosenka.nta.go.jp/)から閲覧できるので、確認してみてください。


【借家権】
マンションやアパートなど、建物の賃貸借に関して、借りている人が持っている権利を借家権といいます。借家人がもつ借家権の評価額は、借家権割合(30〜40%)を自用家屋の評価額にかけた額です。また、借家権の取引の対象となっていない地域でも、貸家の評価に関しては計算に含めます。


【借地権】
建物を所有する目的でほかの人の土地を貸借している人が、土地に対してもつ権利を借地権といいます。ここで土地を借りている人を借地人といい、借地権の評価額は、自用地価額×借地権割合の式で算出されます。


【建物】
建物の評価方法は固定資産税評価額で決まります。固定資産税評価額が1,000万円ならば、相続税評価額も1,000万円となります。


【預貯金】
預貯金の評価方法は相続開始日の残高となります。相続が開始すると口座は凍結され、引き出しなどはできなくなりますので残高証明書を発行してもらい、預貯金の額を確認して遺産に計上します。
また、定期預金や定期郵便貯金、定額郵便貯金など普通預金より利率が高いものは、相続時期に解約した場合の受け取り金額が評価額になります。


【株式】
株式の評価は預貯金などと同様に相続開始日の終値を評価額とするのが妥当です。しかし株価は経済状況の変動などを受けやすいため、評価額を決める際にある程度の幅がもうけられています。次の4つのうちからもっとも低い価格で評価します。

1.相続開始日の終値

2.相続開始日当月の終値の月平均額

3.相続開始日前月の終値の月平均額

4.相続開始日前々月の終値の月平均額


【家財道具】
テレビ、クーラー、自動車、タンスなどの家財道具も当然相続財産として計上します。原則は基本的には、時価で計算するのですが、家財道具など現在いくらで取引されるのかというのをいちいち調べていくのは困難です。実務上は全てをまとめて、家財道具一式100万円といったようにまとめて評価することが多いようです。


【生命保険】
生命保険契約に関する権利を取得した場合、課税時期の時点で解約したときの払戻金相当額が評価額となります。


【固定資産税評価額】
市町村の税務課(東京23区では都税事務所)にある固定資産課税台帳に登録してある土地や建物の評価額を指します。固定資産税評価額は、次のような税金を計算するときに使います。

(1) 固定資産税や都市計画税の税額

(2) 不動産取得税や登録免許税

(3) 相続税や贈与税を計算するときの土地や建物の評価額
固定資産税評価額は国が定めた「国定資産評価基準」に基づいて市町村が決定します。評価額は、土地については時価の60〜70%(公示価格の70%)、建物については建築費の50〜70%ぐらいです。
評価額は原則として3年ごとに見直して評価替えが行われます。

土地については地価の動きにより評価額を変更しますが、評価額を登録した固定資産課税台帳は、通常毎年3月1日〜3月20日までの間、縦覧することができます。台帳を見て評価額に納得できないときは、通常3月1日〜3月31日までの間に審査の申し出をすることができます。この期間に審査の申し出がなければ台帳の評価通りで確定します。
固定資産税や都市計画税は、固定資産税評価額(住宅地などで軽減措置のあるものはそれを適用した後の額)×税率で計算しますが、地価の上昇や株価基準の変更により、3年ごとの評価替えのときに評価額が高くなった場合、評価額にそのまま税率をかけたのでは税金の負担が急に重くなってしまいます。
そこで土地については、負担調整率というものを設けて、段階的に税額を上げていく措置がとられています。
土地や建物の固定資産税評価額を知りたいときは、市町村の税務局(東京23区は都税事務所)で固定資産課税台帳を閲覧できますが、市町村によっては本人か本人の委任状のある人しか閲覧できないところもあるので注意してください。

相続税の申告などで必要なときは、評価額の証明書を発行してくれます。固定資産税と都市計画税の税額を通知するため、毎年4月頃に納税通知書が送られてきます。
増税通知書には、課税標準額、税率、税額が記載されており、課税標準額に税率を乗じると税額になります。この課税標準額というのは税金の対象となる金額のことです。

課税標準額は基本的には固定資産税評価額と同額ですが、住宅用地の特例などの、軽減措置の適用や負担調整がある場合は異なる金額になります。



【遺言のしおり】


遺産は基本的に法定相続人に相続順位ごとに相続されますが、遺言書が存在すると変わってきます。
遺言書を最重要に考えなければならないので、遺産の分配方法もまったく変わります。

遺言は満15歳以上であれば未成年者でも作成できます。
法定代理人は必要なく、成年被後見人でも本心に復している時は医師の立会いがあれば遺言は可能です。

遺言には2つの重要なメリットがあります。

自分の思い通りに財産を処分できる

相続人が取得する相続分は次の順序で決まります。

1.遺言
2.遺産分割協議
3.法定相続分

以上のように遺言をしていない場合は被相続人の意思は反映されません。
遺言をすることにより初めて意思に沿った相続が行われることになるのです。
遺言で遺産分割内容、子の認知、マイナス財産の処理方法を明確にすることで死後の紛争を防ぐことができます。
また法定相続人以外の人に財産を与えることも可能です。

遺言書の種類

遺言書には「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」「秘密証書遺言」「危急時遺言」「隔絶地遺言」の5種類があります。

遺言書には証人が必要ですが立場的に証人になれない人もいます。
未成年者、推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者、直系血族、公証人の配偶者、四親等内の親族、書記及び使用人などです。

言葉や耳の不自由な人については、意志を伝える通訳を介して遺言を作成することは可能です。
また遺言執行者でも利害関係がなければ証人として立ち会うことが可能です。

遺言書を書く場合に重要なのは、財産を特定できるように遺贈するものを明確に特定し、誰でも解るように記載することです。
公証人には依頼せず、自分で手書きをして作成する遺言書です。
自分一人で作成できるため、遺言書の内容も秘密にできますが、病弱中の作成で筆跡が乱れているなど、
有効性に問題が生じることや隠匿や破棄の危険性も秘めています。

自筆証書遺言書には以下の要件があります。

1.全文を自分で書く
2.日付を自分で書く
3.氏名を自分で書く
4.押印をする

ワープロなどコンピューターによる作成は認められません。
他人による代筆も認められませんが、手が震えてしまうので他人に添え手をしてもらって書いてもらうものは認められています。

また年月日が特定できるように書く必要があり、最後には必ず署名または押印する必要があります。

押印は実印、認印どちらでもよく拇印でも有効ですがなるべく実印にすることをお勧めします。
完成した遺言書は人にあずけると改竄や破棄の可能性が常に付きまとうので、銀行の貸し金庫や遺言の執行者に保管を依頼するべきだと思います。

なお遺言書での加除訂正は遺産相続に大きな影響を及ぼすので作成は慎重に行いましょう。
訂正する場合は、署名の下に押印した印鑑と同じものを使って押印します。
自分で公証役場に遺言書を持っていき、確かに遺言者本人が認める遺言書であると、公証人に証明してもらう遺言書です。
遺言者が「遺言で認知をしたいが、他人に知られたくない」という考えの時は秘密証書遺言を作成するのが賢明です。

秘密証書遺言は自筆証書遺言と違い、ワープロなどコンピューター作成でも構いません。(署名は必ず自筆)
ただ公証役場で公証人に遺言書を証明してもらう時は、利害関係のない成人二人以上を証人として連れてこなければなりません。

公証人が遺言者および証人と共に署名押印し秘密証書遺言が成立するためです。
秘密は完全に保ちながらも、偽造の疑いをかけられないで、本人の遺言だと確定できるのが秘密証書遺言のメリットということです。

ただし保管は自分でする必要があり、死後に家庭裁判所で検認の手続きが必要になります。

公証人は内容に関与しないために書き方に不備があれば無効になることもあります。
注意点として財産を特定して書くことです。特に不動産、預貯金、株式などは財産が必ず特定できるようにきちんと明記します。

秘密証書遺言は性質上トラブルが起こる可能性が高いので、遺言執行者を指定し「遺言執行者は、この遺言執行のために必要な一切の権限を有する。」と条項を入れておく事をお勧めします。
自分と証人二人以上で「遺言書の案文」「遺言者の印鑑証明書」「証人2名の住所、職業、氏名、生年月日の住民票」
「遺言者と相続人の関係がわかる戸籍謄本」「相続人以外の人に遺贈する場合、「その人の住民票」「土地と建物の登記簿謄本」「固定資産評価証明書」「遺言執行者を指定する場合は、「その人の住民票」その他公証人から指示されたものを持ち公証役場へ行き自分と証人全員が署名押印することで成立する遺言書です。

遺言書の中で、一番安全で確実な遺言なのがこの公正証書遺言です。

遺言者の希望する内容を元裁判官や元検事、弁護士など、法務大臣から任命された公証人が遺言書として作成するので法的に無効になることはありません。

また原本が公証人の手元に20年間保管されるので紛失や改竄、盗難などの心配がありません。
このように最も安全な手段である公正証書遺言ですが、手続きが非常に面倒で公証人への依頼費用もかかるということに問題があり、そして遺言の存在と内容を立ち会った証人たちに知られてしまうという欠点もあります。


目的の価額
手数料
100万円以下
5000円
200万円以下
7000円
500万円以下
11000円
1000万円以下
17000円
3000万円以下
23000円
5000万円以下
29000円
1億円以下
43000円
3億円以下
43000円+5000万円ごとに13000円加算
10億円以下
95000円+5000万円ごとに11000円加算
10億円を超える
249000円+5000万円ごとに8000円加算
自分に死期が迫り署名押印できない遺言者が口頭で遺言し、証人がそれを書面化する遺言書です。

病気などで死に直面した人に認められる一般危急時遺言と、船舶の遭難である場合に認められる船舶遭難者遺言が法律で定められています。

証人が2人以上(一般危急時の場合は書面化する証人を除く)必要で、筆記した内容を遺言者および承認してもらう必要があります。
また遺言の日から20日以内に、家庭裁判所に遺言の確認を得なければ遺言の効力はありません。

遺言者が死亡してしまった場合は、遺言書の検認申し立ても必要となります。
自分が一般社会との交通が断たれた場所にいるため、普通方式による遺言ができない場合に認められる方式です。

伝染病隔離者遺言と在船者遺言が法律で定められています。
伝染病隔離者遺言の場合は警察官1人と証人、在船者遺言の場合は船長もしくは船の事務員と証人が立ち会い、自分が作成した遺言書に署名・押印してもらう必要があります。

どちらの場合も家庭裁判所の確認は不要です。

遺言書に書けること

基本的に、遺言には何を書いても良いとされていますが、法律的に効力のあるものは決まっており、以下のものがあげられます。

・相続人の廃除、廃除の取り消し
・子どもの認知婚姻関係以外によって生まれた子を自分の子であると認める。
・財産の遺贈
・財団法人設立への寄付
・信託の設定
・遺言執行者の指定
・委託
・遺言を実行してもらう人を指定、またはその指定を第三者に委託
・遺贈についての遺留分減殺方法の指定相続人が遺留分を主張したとき、どの財産から減殺するかを指定
・遺産分割の方法の指定
・指定の委託
・遺産分割の禁止遺産分割を禁止することができます(5年間)
・相続人の担保責任の指定
・相続分の指定
・指定の委託法定相続分と異なる相続分の指定
・後見人
・後見監督人の指定未成年者に対し最後に親権を行使する者は、遺言で後見人を指定