Q15 経費の処理方法を教えてください。

 

A15 解 説

 

事業(医業)に係る支出でも全てが必要経費となるわけではありませんので注意が必要です。税務上「必要経費」とするためには、医業収入を得るために直接要した費用、又は事業の遂行・維持管理のために要した費用であることが必要です。個人的な食事代・教育費等の生活費は必要経費にはなりません。そのためにも、事業と個人はしっかりと区別しておくことが最重要です。

 

1.必要経費とならない支出の例

 

●家事費(生活費・教育費・医療費等)

●本人及び家族の国民健康保険料、国民年金掛金

●本人及び家族の生命保険料

●所得税及びその加算税、延滞税

●住民税及びその加算金、延滞金

●罰金、科料、過料

●同一生計の親族に支払う給与(青色事業専従者給与を除く)、賃借料、支払利息など

●故意または重大な過失による損害賠償金

 

2.気を付けたい医業費用 

上述したように事業に係る支出でも必要経費とならない場合があります。

医業費用について気を付けたいポイントをQ&A形式で以下にあげます。

 

Q

診療所と併設している住居に係る電気代、水道代、ガス代は経費になりますか?

A

事業上の経費と家事上の費用が混在しているものを家事関連費といいます。

 家事関連費は、使用時間や面積割合など合理的な按分基準により事業用として算出した金額が必要経費になります。

 

Q

個人で診療所を経営していますが、将来リタイアするときに退職金をもらい、それを必要経費として処理できますか?

A

個人事業主が事業から引退する際に、退職金という税務上の概念はありません。事業所得の計算上、必要経費にはできません。当然退職所得にもなりません。

 

Q

医師会・歯科医師会の入会金や会費は必要経費になりますか?

A

医師会・歯科医師会の入会金や会費の取り扱いは以下のようになります。

・ 医師会・歯科医師会の入会金は、繰延資産として5年間で均等償却します。 

・ 医師会・歯科医師会の会費は必要経費として処理します。

その他のものは内容を確認して判断することになります。

 

Q

看護師の不注意で患者さんから損害賠償を請求された場合、支払った損害賠償金は必要経費になりますか?

A

事業主に故意又は重大な過失がなければ必要経費になります。損害賠償金には、これらに関連する弁護士費用も含まれます。

 

Q

領収書をもらい忘れた支払は経費にはできませんか?

A

領収書をもらい忘れたり無くしたりした場合でも、支払年月日、支払先、金額、取引の内容等を伝票・支払証明書などに正しく明記し、毎日の帳簿に記帳保存することによりその事実が証明できれば経費にすることができます。

 

3.概算経費率による経費の計算

 

個人でクリニックを開業される場合に、社会保険診療報酬が年間5,000万円以下であるときは、経費の計算をする際に概算経費率を使うことができます。

概算経費率を使う場合は、実際の必要経費の額に関わらず、次の概算経費率の速算式に当てはめて計算した金額を、事業所得の計算上必要経費とすることができます。ただし、実額計算と概算経費率のどちらを採用するかを判断するためにも、また、正しい経営状況を把握するためにも実額経費の額を計算しておくことは大切です。

 

<概算経費率の早見表>

社会保険診療報酬(A

概算経費率の速算式

2,500万円以下

A)× 72

2,500万円超 3,000万円以下

A)× 70% +  50万円

3,000万円超 4,000万円以下

A)× 62% + 290万円

4,000万円超 5,000万円以下

A)× 57% + 490万円

 

 

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